02
「ふぅ。嵐が去ったな…ほんと変なやつ…でも飽きねぇし、なぜか嫌じゃねぇんだよなぁ…」
何故か自然と笑顔になってしまう。
おもしれーし、キャンプ前日に宝石を盗みに行くとでも称してあいつんちに様子見に行くか…
あいつんち金持ちだし、宝石あるし、予告状出しても変には思われねーだろ。
快斗がそう考えているなど名前は知る由もなく、キャンプ前日になった。
「名前ー?予告状きてて警備を厳重にしてるから今日はもう外でないでね。安全の為に自分の部屋にいてー?明日のキャンプの用意でもしておきなさいね♪」
「はーいお母さん!」
こうして夕方、私は自分の部屋に閉じこもった。
「キャンプの用意はもうしてあるし…暇だなぁ。」
そう思いふと窓を見ると、流れ星がキラリと光る。
「流れ星?!」
勢いよく窓を開け、両手を組んでお願いをした。
「黒羽くん黒羽くん黒羽くん…」
たくさんの流れ星にこれでもかとお経の様に黒羽くんの名前を呟き、気が済んで夜空を眺めた。
「あっ!また流れ星ー♪あ!あの流れ星大きい!」
独り言を言いながら見ていると、大きい流れ星が凄い勢いでこっちに近づいてくる。
「わぁ♪流れ星がどんどんおっきく…ってどええええっ?!?!」
流れ星だと思っていた物は人間で、私の部屋へそのまま入ってきた。
「怪盗キッド…?!」
「ご名答。こんばんは、お嬢さん♪今宵は流星がきれいですね」
そういって怪盗キッドは私の手の甲にキスを落とし、1本のバラをくれた。
「宝石?」
「えぇ、予告状通りに宝石を頂きに参りました…」
「一階にあるよ、どーぞ」
「…わざわざ場所まで教えて頂けるとは。いいんですか?盗みにきたんですよ?」
「今それどころじゃないの!」
「何どころなんですか?」
「色々と…」
「ほぅ…」
そういいながらキッドは私の部屋を見渡す
「…!!っこっ、これは…?」
キッドはコルクボードにたくさんの写真が飾ってあるのを発見したらしく、なぜか引きつりながらも笑顔で聞いてきた。
「それ?私の大好きな黒羽くんの写真!」
「…ストーカーみたいですね…」
「なんでよ!!私も一緒に写ってんだからいいじゃんか!」
「大好きな黒羽くん…でしたっけ?」
「そう、一生叶わない恋のお相手」
ちょっと恥ずかしくて、おどけ笑いをして見せた。
「…一生叶わないなんて、どうして決めつけるんです?」
「んー?わかるから?」
「わかる、とは?」
「黒羽くんの態度で、私の事好きじゃないんだなぁってわかるから」
「聞かないとわからないじゃないですか」
「言ってるもん毎日。でも黒羽くんは優しいから、否定も肯定もしないの。」
「真剣に言いました?」
「真剣に言ったら否定されるってわかってるから、今のままが1番いいかなぁって…この関係が崩れちゃうなら、言わないで否定も肯定もされずに今のままが1番いい」
「………」
「これ秘密ね!黒羽くんに言わないでね!」
「私は黒羽くんとなんの関わりもありませんし、言いませんよ」
「良かったー!ねぇねぇ聞いて!」
「なんですか?」
「明日友達みんなでキャンプに行くの♪黒羽くんもいるんだよ!ちょー楽しみっ♪」
「相変わらずですねぇ……」
「会ったの初めてじゃん」
「楽しんできて下さいね」
「黒羽くんと五右衛門風呂に入るの♪」
「……入らないと思いますよ…」
「わかんないじゃん!…なんで眉毛ぴくぴくしてんの?」
「…いえ……」
では、私はそろそろ出ますね、と窓際に立ちだした。
危ないなぁ。
「あれ?宝石いいの?」
「…私は怪盗ですよ?盗みにきたんです。貰いに来たのではありません。勝負するのが好きですから…」
そういって帽子を深く被り、背中から外へ落ちていった。
「あ!え!?危ないっ!!」
走って窓から外を見ると、既に姿は見当たらなかった。
「あれ……?」
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