03
「じーちゃん!!」
「ぼっちゃま!!私が出勤してくると、これが……!!」
じーちゃんが差し出してきたのは、1枚の紙。置き手紙だろうか。
慌てて目を通すと、安堵で肩を落とした
黒羽君、寺井さんへ
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今までありがとうございました。
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お世話になりました。
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「……ははっ」
そっか。
今更気づいたよ。
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今まで助手を出来て楽しかったです。
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ブルーパロットで働くのも楽しかったで
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す。黒羽君、ずっと大好きだよ。
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でも、ここから離れる。だから………
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「俺、行ってくるわ」
「はい、行ってあげて下さい」
紙を置いて、ある場所へ向かった。
あいつがいるのは、あそこしかない。
気づいたよ。
俺は、ドジで、抜けてる名前が好きだった。そんな名前の傍にいるのが、助けるのが好きだった。
あめーは相変わらず、手間のかかるやつだよな。
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だから………探して下さい。
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名前より
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「はぁっ……みっけ」
やっぱりここだ。
まだ寒い今、草が凍りシャリシャリと音がなる。
ただの広い野原。
でも、春や夏は1面きれいに花が咲く。
好きな奴を連れてこようと思っていた、俺の穴場だった。
夏に名前を連れてきた時あいつは凄く感動していて、ここでアイス食べたいね、なんて言うから、買って来てやると食べる前にこぼして、ぐずる名前に俺のをあげた。
そこからここでアイスを食うのが夏の鉄板だったよな。
その日以来名前はいつも、道を忘れたから一緒に行こうと誘ってくれた。
自惚れかもしれねーけど、名前は俺とここに来たいって思ってくれてたのかな。
冬になってまだ1度も来ていなかったからここだと思って来てみたら、案の定、名前の小さな背中が見えた。
その背中は少し震えていて、泣いている様に見えた。
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