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「着きましたよ」

「うわ、綺麗!」


ドアを開けると、夜の海だった。
深く青い海に、大きな月。
周りには星がチカチカと綺麗に光る。


「センスいーわね」

「それはどーも」


隣で優しく微笑む彼の髪は風に揺られ、少しドキリとした。
今まで意識したことはなかったんだけどな。


「ちょっと待ってて下さいね」

「え、うん……」


一緒に手前の木の柵に手を掛けていたが、すぐにそこを離れ車に乗って何処かへ行ってしまった。


「え……」


置き去り?
彼のあの笑顔で置き去りにされたら中身の恐ろしさは半端なものじゃない。
まぁそれはないと思うから、早く戻って来るのを待った。

少し寒くて、身震いをする。


「ちょっと寒いなぁ。真夏なのに。海の側だからかなぁ」


なんて言いつつ、視界が綺麗で携帯を向ける。その画面の下で、物陰が動いた気がして直接砂浜を見た。


「……透くんっ?!」


見れば、笑顔の透くんがこっちに向かって手を振っている。

表情は暗くて見えないが、手を振っていて真顔だったら怖い。
だからきっと笑顔だろう。

なんでそこにいるの?車は?と大声を出そうと思ったが今は夜。
周りにはあまり家はないが、常識的に考えて迷惑だろうと思い、階段を探してそこから下へ降りた。


「透くんっ!なんでここに?車は?」

「あそこは車を置いてはいけない場所ですし、車を移動させるついでに名前さんが寒そうだったのでコンビニで温かい飲み物を買ってきました」


はい、と暖かいお茶をくれた。
お礼を言ってそれを飲み、一息ついてまた夜空を眺める。
小さな小さな幸せだ。


「少し、癒されました?」

「え?」

「起きた時の名前さん、凄く疲れきった顔をしてましたから」

「そっか、ありがとう。癒されたわ」


透くんは、私の事を考えてドライブに誘ってくれたんだ。
こんな遠いところまで。
なんでここまでしてくれるんだろうか。
私に同情してくれているのか、それともただたんに元気になって欲しいからだろうか。
後者だとしたら、理由は?

あぁ、何事にも深く考えすぎるのは私の悪い癖。
例え前者でも後者でも、私を元気づけようとしてくれているのには変わりないから、あまり余計な事を言わないでおこう。

これは私の周りの事件だから、それに透くんまで悩ませる必要はない。


「……名前さん。1人で抱え込まないで、僕に話して下さい」

「あっ……う、うん」


私の心の声が漏れていたかのように、決意を打ち砕く様に、優しい声色で言われた。そんな優しさに、早くも甘えてしまいそうになる。


「どんな夢を見たんですか?さっき」

「……それは……」

「それとも、記憶……でしたか?」




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