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仕事が終わり、次はポアロでバイト。
多忙な毎日を送っているものだ。


「名前さん、何飲みます?」

「アイスコーヒー」


名前さんが一緒にポアロへ来たいと言うから、彼女も連れてきた。

公安時代からの仲で、しかも年下なのに警戒心がまだ残っているのか敬語とさん付けが抜けない。

そんな必要はないと思っているものの、謎が多い彼女には警戒せざるを得ないのだ。

俺の事は結構話してるつもりなんだけどな。君はまだ俺を信頼していないのかい?


「はい、どうぞ」

「ありがとう」

「……名前さん」

「ん?」

「何か進展があったら、僕に話して下さいね。お力になりますよ」

「……うん、ありがとう!」


その笑顔は、偽物だ。
全く頼ろうとしていない。
今朝話してくれた事の様に、大切な事は全て俺に話して欲しい。




ーー君の家族は、黒の組織に殺された。ってね。

ーー……なるほど。

ーーその電話してきた男はあの男なのか、また別の男なのか。その男は黒の組織となんの関係があるのか、家族が殺された理由はなんなのか。それを知りたくて、黒の組織へ潜入したの。

ーーなんで、僕に話してくれなかったんです?

ーー話して謎が解けるわけでもないし、バーボンは関係ないでしょ?

ーー……あるんですよ。

ーーないわよ。



あるんだよ。名前さん。
君が大切だから。
苦しい事があるなら、全て俺に話して欲しい。


「透くん?」

「ん、はい?」

「そんな見つめられると照れちゃうよ」


眉を下げて微笑まれ、そんなに見ていたのかと少し恥ずかしくなった。


「す、すみません」

「別にいいけどね。なんか眠くなってきたなー」

「……名前さん、今朝言っていた事って、少しはわかったんですか?」

「んー。なーんにも。結局は私の記憶が戻らないと何もわかんないのよね」

「その男の顔、覚えてないんですもんね?」

「そうなの。ほんとに黒の組織の人なのかなぁ。もう戻って来ない、顔もわからない人たちが殺された理由を探って、なんの意味があるんだろう」

「それでも、家族なのは変わりありません。記憶を失っただけで、家族との思い出は必ずあるはず。それを思い出した時に後悔しないよう、原因を探るべきだと僕は思いますけど?」

「……そうね、ありがとう」

「ある意味、僕も同じ様な理由ですし」

「えー!なになにー?どんな理由ー?」


身を乗り出して、恋話しをする女子高生の様に目を開ける。
そんな1面は組織の仕事中は見られないから、凄く可愛らしい。
そんなギャップにやられたんだな、俺は。
……まぁでも。


「そんな楽しそうに聞く話じゃないですよ」

「あら、失礼……」

「ははっ。まぁ、僕もある男の事が知りたくてね」

「私知ってる人ー?」

「だから恋話しじゃないんですから……知らないと思いますよ」

「そっかー。なんで知りたいの?」


話すのはここまで。
もっと深い話は君もしてくれる様になってからじゃないと、割に合わないと思いません?




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