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「いらっしゃい、透くん」

「お邪魔します」


今日、私の家にご飯に誘った。
というか、ご飯の作り方を教わりたかった。料理上手な彼には尊敬する。

私も下手というわけではなく、普通なのだ。ほんと、人並みって感じ。

彼を家に誘ったのは別に誘惑したいわけでもなく、彼もまたそういう風には捉えていないだろう。


「で、何を作りたいんです?」

「色々!」

「アバウト過ぎて困りますね……」

「買い物行きましょ?そしたら何作りたいか思い浮かぶかも」

「あまり組織には見られたくないんですが……」

「わかってるわ。近くにいいスーパーがあるの!そこにしましょ」


普段からあまり組織に見られたく無い為、小さなスーパーへ行っている。

まぁスーパーの中では会わないと思うけど。
ジンがスーパーで買い物してたら爆笑してしまう自信しかない。


「……なんでニヤケてるんですか」

「別に。行きましょ」


面白いから、考え無い様にしよう。



ーーーー


「着きましたね……中々遠い……」

「文句言わないで。車無いんだからしょうがないでしょ」


今回は透くんも車で来ていないので、歩きで来た。
車でわかっちゃうものね。組織達に。


「えと……人参人参」

「ここですよ」

「玉ねぎ玉ねぎ……」

「あっちです」

「じゃがいも!」

「………」

「あ、あった!後は……肉肉〜っと」

「……まさか教えて欲しいってカレーの作り方じゃないですよね……?」

「え?違うわよ!あったらいいな〜っていう食材よ」

「……ならいいんですけど……」


透くんの苦笑いに冷や汗を隠しながら他の食材も買いあさり、大量の荷物を透くんが持ってくれた。

普段華奢に見える体だが、ここまで腕の筋肉を見せられると少しドキドキしてしまう。
意外にあるんだなぁ、筋肉。
そういえば趣味はボクシングだっけ。


「どうしたんですかじっと見て」

「え、あ、いや……透くんって意外に筋肉あるのね」

「あるんですよ、意外に」

「あ、あの意外にって失礼よね……!ごめんなさい」

「あぁ、何も気にしてませんよ?」


ニコーっと笑う透くんに、安堵のため息が漏れる。
なんか申し訳ないから、私も荷物を持とう。


「わ、私も持つわね!」


袋の持ち手を掴むが、透くんは中々離してくれない。


「重いですよ?」

「女を甘く見すぎよ!」

「………じゃあ、お願いします」

「いえいえ、ぎゃっ!!」


透くんが手を離した瞬間、荷物は何倍にも重くなり腕はがくんと下へ下がった。

透くんはこんなに重たいものを……!


「やっぱりいいですよ、僕が持ちますから」

「……なんで少し笑ってるのよ」

「可愛いなぁ、と思っただけですよ」

「なっ……?!馬鹿にしてるでしょう!」

「してませんよー」

「してるわよ!!」

「してませんってー」


なんだかこんなに楽しい買い出しは、久しぶりかもしれない。




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