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なんとかシェリー事件を終えた後、特に何事もなく時は経過する。

“時”だけは。


「名前さん、今日は空いてますか?」

『……ごめなさい、今日はちょっと』

「そうですか……また今度お誘いしますね」

『ごめんね』


じゃあまた今度。と軽い挨拶をして電話を切った。
最近、名前さんの様子がおかしい。
俺が何かしただろうかと考えるが、特に思いつくこともなく。

冷たくなったと言うか、気まづそうにする。記憶を何か思い出したのだろうか。

いや、でも記憶喪失の後に出会っているから、記憶と俺は関係ない。


「気になった事をとことん探るのは、探偵の職業病かな」


まぁ、探偵だけが仕事じゃない。
裏にも表にも動く俺は万屋とでもいったところか。

せっかくの休日なのに、頭の中は名前さんの事でいっぱいだ。


“名前さんを助けてあげたい”

でも彼女の記憶が戻らない限り、俺は知り様もない。俺は協力する事しか出来ないが、粉々になった記憶を貼り付けて行く作業は、思った以上に困難なのかもしれない。

カップに入った残り少ないコーヒーを回し見る。

一か八か
やってみるか


もう1度携帯を開き、リダイヤルを押した。


ーーーー


「どこに行くの?」

「秘密です」


昨日、名前さんに明日の何時でもいいから連れて行きたい所があると誘うと、夕方なら。と了承してくれた。

そして今、隣に名前さんを乗せ目的地へ向かっている途中。

いいきっかけになってくれればいーのだが。


「………」


目的地へ近くなればなるほど、名前さんの顔に曇りが出てくる。
そろそろわかってしまうだろーか。


「ねぇ、待って。どういう事?」

「そろそろです」

「何を考えてるの?何をしたいの?」

「記憶を取り戻しやすくなれば、と思いまして」


そう言ってエンジンを止めた
目的地は真横

名前さんの事件後に壊された、家が建っていた場所だ。

今は空き地となっていて、区切りがさしてある。


「嫌な思い出しか出てこないわ」

「……とりあえず、入りましょう」


多分、というか、結構怒っている。
そりゃあそうだろう。
傷ついた場所へ連れて来られたのだから。


車を降りて、区切りの中へ入る。
許可は取っていて、なんの問題も無い
あとは記憶を取り戻すのを待つだけ


きっと、きっと何か重要なことを思い出すはず。
そう思って一時間が経った時だった。


「………っ!!!」

「………」


何かを思い出した様に、顔を歪めた。
今はまだ、口を出してはいけない。


「……私に、お兄ちゃんがいた」

「……お兄ちゃん?」

「……降谷零」


真剣な顔で俺を見て、そう呟いた。


「……どうしました?」

「……あなた、じゃないよね……?ゼロ」


それは、あなたがお兄ちゃんだと、そう思っているんだね。


「……そういうことだったんですね」

「どういう意味?」

「名前さん。君にはちゃんと伝えておこうと思う。僕は、君のーーー」




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