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「うぅっ…………なーんてな♪」
「なにっ?!」
俯いていた顔を上げ、白衣を脱ぎ捨てた彼女。否、彼は、不敵に笑んだ。
「怪盗キッド……っ!」
「おいベリーニ、どういう事だ!!」
「知らないわよっ!!シェリーはどこ?!」
「さぁな!とにかく宝石は無いようだから……もう用はねぇ。では、またの逢瀬に……っと!」
煙幕が撒かれる中、みんなで銃を向け、発砲。
さすがのキャンティも、視界が悪いようではうまく狙えない様だ。
煙幕が晴れたあとには、もうキッドはいなかった。
「くそっ……おいベリーニ!!」
「わかってる。何をそんなに焦ってるの?獲物が増えただけでしょ?」
舌打ちをしたジンは中へ戻って行った。それにつられる様にみんなも戻って行く。
それを見送り、バーボンを呼んだ。
「行くわよ、バーボン」
「ですね」
2人で、車庫に向かって歩いていく。
「キッド、やってくれたわね」
「やってくれましたね。あ、車の鍵、ちゃんと開けといたままにしてくれました?」
「しないとあの子が大変だからね」
苦笑いで返した後、車庫に着き車を発進。しばらく走った後、口を開いた。
「お疲れ様。もう普通にして大丈夫よ」
「あー息苦しかった!防弾チョッキ着てたからまだ良かったけど衝撃半端ねーから痛い」
ブツブツと文句を言いながらお腹を撫でる、後部座席の男。
「演技が上手いのね、怪盗キッドさん」
「怪盗をなめて貰っては困ります」
「ふふ。はいはい。それと、これ」
「なんだこれ」
私がキッドに差し出したのは、1万円札。別に約束していたわけでもなく、今財布から取り出したものだ。
「報酬よ」
「報酬?……いらねー。今回はおめーらの為に協力したわけじゃねぇし、名探偵達に協力したわけでもねぇ。つーかその言葉二度と俺に向かって言うな。むかつく」
「じゃあ自分の為?」
「俺は宝石と借りは返す主義なんでね」
足と腕を組み、ニヤリと笑ったキッド。
随分と大人な対応ね。
「……じゃあお姉さんからのお小遣い♪」
「え、小遣い?ならいるー!」
わーいお小遣い♪と喜ぶキッドを見たあと、バーボンと目が合った。
「子供ですね」
「子供ね」
口が揃ったのは言うまでもない。
さっき大人っぽいと思ったのは間違えだった様だ。
「なーちゃんと家まで送れよな」
「勿論。今回は貴方のおかげで助かったわ」
「抱き着かれた時ドキドキしちまったぜー。危ねー危ねー♪」
「ませてるわねー」
「えーベリーニちゃんみたいな女の人に抱き着かれたら誰でもドキドキしちゃうでしょー」
「……ベリーニ。このままキッドを警察に届けても大丈夫ですか?」
「「えっ?!」」
バーボンはどうやらチャラチャラした男が好きじゃないらしい。
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