9




「ジン、シェリーを確保したわ。今からバーボンとそっちへ向かう」

『やっとか……』

「ごめんなさいね、遅くなって」

『逃がすなよ』

「わかってる。じゃあ」


通話ボタンを切って、シェリーをひと睨み。
手を後ろで縛った、18歳の宮野志保。


「行くわよ、シェリーちゃん」

「………」

「大丈夫。コナン君は隔離しておいたから。ふふ」

「……っ……」


車を出したバーボンの元へ行き、シェリーを中へ押し込めた。


「さ、行きましょ」

「これからどうなるか楽しみですね、シェリー」


ーーーー


「着いたわよ。さ、歩きなさい」


服を掴み、無理やり車の外へ出した。


「きゃっ!……どうせ死ぬんだから、そんな扱いしなくてもいいでしょ?最期くらい、綺麗に死なせて」

「相変わらず口が達者ね」

「よぉ。やっと会えたな……シェリー」

「ジン……!!」


ジンのお出ましだ。
ジンが睨みつけると、震え出すシェリー。

そのシェリーをぎゅっと抱いて、耳元で囁いた。


「あと少しで楽になれるわ」

「近寄らないで!!」


私を睨みつけるシェリーを見て、笑う組織のメンバー。

もし、本当に私の両親もこのメンバーに殺されたのなら、どんな気持ちだったのだろうか。
今のシェリーみたく、震えていたのだろうか。

そう思うと、本当にここへスパイとして来たのは、正解なのだろうか。

顔も思い出せない両親。
もし記憶喪失でなければ、今はぎゅっと握っているこのこぶしに銃を持ち、組織のメンバーを撃ち殺していたかもしれない。
記憶喪失にある意味助けられた。


「ベリーニ。僕の車を車庫へしまってきて貰えますか?」


その声に、ハッと我に返り頷いた。

近づいてきたバーボンは私の固く握りしめていたこぶしを手に取り、車の鍵を握らせた。


「お願いしますよ?」


にこりと笑うその笑顔の下で、私の鍵を持った手をぎゅっと握る。

あぁ、きっとバーボンは気づいていたんだ。一旦私を退却させる為に、頼み事をしたんだね。

とりあえず今は、思い出してはいけない。


「行ってくるわね、バーボン」

「行ってらっしゃい」


踵を返し、歩きながらもジンとシェリーの会話に聞き耳を立てる。


「シェリー。お前にチャンスをやろう」

「チャンス……?」

「お前の腕は確かだ。このまま組織に戻り、薬の完成に生を注がないか?」

「………」

「答えろ。死ぬか生きるかどちらかの選択なんて、簡単だろ?……シェリー!」


大きなジンの声が、響き渡る。


「………」

「3秒以内に答えろ。3……」

「………」

「2……」

「……っ…」

「1……!」

「〜っ!」

「ゼロ…!!」



ドクンっ……

心臓が、大きく脈打った。


ゼロ………?





prev|next

[小説選択画面へ戻る]
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -