6
あれから数日が経ったが、中々記憶が戻らないでいる。
記憶を戻そうとすればするほど出てこないのがオチ。
ため息をついてストローに口をつけたところで、ジンから電話がきた。
「はい」
『仕事だ。ベリーニ』
「了解。あなたと行くの?」
『俺は別の場所に用事がある。バーボンはどうした』
「知らないわ。プライベートではあまり関わってないの」
『バーボンと組んでシェリーを探して来い。見つけたら連絡をよこせ。逃がすんじゃねぇぞ』
「わかってるわ」
ぶつりと電話が切れ、ため息をつく。
ジンとのこういう会話はもう耳が腐るほどした。
いつも捕まえる気が無く、見つからないで済ませていたがそろそろ限界だ。
「バーボン」
「何ですか?」
「プライベートではもっと隠れて会いましょ。まだ疑われてはいないけど、念には念を」
「わかってますよ。それより今の電話の内容は、バーボンと一緒にシェリーを探し出せ。ですか?」
「そう。そろそろ行動しないとやばいと思ってたのよ」
「もうあの3人には話してあるんですか?」
「1人とはもう話が済んでる。残りの2人に直接連絡するのは危険だから、ぎりぎりまで引っ張った。周りから攻めていこうと思うの」
「さすがベリーニですね。では、僕はここにいます」
「警戒しといてね」
ポアロであらかじめ用意しておいた制服に着替え、黒縁のメガネを掛けた。
「どう?これ!高校生に見える?」
バーボンの前でくるりと周り、ポーズをとる。
「似合いますね。可愛いですよ」
にこりと笑った彼に、本気で照れる私。
可愛いはやめてほしかった。
「ナウい?」
「その言葉が古いです……」
苦笑いをされて、じゃあ行ってくるとそそくさとポアロを出た。
向かうは、あの高校。
ここからそんなに遠くない為、すぐに着くと計算通り帰宅時間。
みんなわらわらと帰って行く中、ターゲットを発見。
「……行くか」
その子に向かって歩き出し、わざとぶつかった。
「わっ!」
「きゃっ!」
「ご、ごめんなさいっ……!下を向いてて見えなくて……!」
「こちらこそすみません!大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫なんですが……メガネが飛んでしまって……見えないんです……」
「私も一緒に探します!」
こんなベタな作戦にも怪しまない、優しい彼女。ごめんね。
「あ、ありましたよ!」
「ほんとですか?!ありがとうございます!」
どうぞ、と渡されメガネをかける。
「良かったぁ……」
「本当にすみません……」
「いえ、私がぶつかってしまったので……」
「そんな……。あ!その制服、江古田高校ですか?」
「そうなんです!良くわかりましたね!」
セリフを吐き、ここからもじもじちゃん発動。
「……どうしたんですか?」
小首を傾げるこの子を、チラチラと見て。
「あ、あの……いきなりなんですが……私見た目通り地味で友達あんまりいなくて……良かったら、お友達になりたいです」
「地味だなんてそんな……!でも、嬉しい!私で良ければ♪私、毛利蘭です!」
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