15-3
「今日も送るよ」
「いつもごめんね夕くん。ありがとう」
「なんてことないよ」
何気ない会話をしつつ2人で下駄箱に靴をしまっていると、奥から快斗が走ってきた。
「名前!!」
「…快斗っ…」
「今日は俺と帰るぞ!」
「えっ、何急に…!!」
「黒羽くん!強引だよ!やめなって!」
「わりぃ夕、こいつだけはおめーに渡せねえ」
「…なっ…!!」
はっ?!
と思う間もなく、ぎゅっと腕を握られ少し怖くなった。
「なっ何っ…!!痛い!」
「行くぞ!おめーんち!!」
「はっ?!」
快斗は怖い顔をして私の腕を無理やり引っ張り、外へ連れられた。
「痛いっ…!痛いよ腕!離して!!」
「…わりぃ…」
快斗は私の腕をパッと離し、お互い無言で歩く。
やがて私の家が見えてきて、快斗をしぶしぶ中へ入れた。
「…どーぞ」
「どーも」
「で、何…?急に腕引っ張って、血相変えて。怖いよ快斗」
「お前、あいつと付き合ったのか?」
「は…っ?!なんで知ってるの?!」
「…やっぱり、付き合ったんだな」
「違くて!なんで私告白されたの知ってるの?!」
「わりぃ、青子と見てた」
「………」
青子も一緒にいたらしいので最低とも言えず、言葉を口にすることができない。
そのまま黙っていると、快斗から沈黙を破った。
「あいつが好きなのか?」
「好きじゃないよ」
「じゃあなんで付き合った?」
「付き合ってないよ?」
「…はっ…?でも、お前嬉しそうに、ありがとうって頭下げてたじゃん」
「あれ?あれは、ありがとう、嬉しい…けど、私には好きな人がいるからごめん。って頭下げたんだよ。告白されて照れない人いないじゃん」
「えっ…」
「私は…好きな人がいるから…」
快斗の事なんだよ、と目で訴えると、快斗は目を見開き顔を真っ赤にした。
「俺っ…!名前が好きだ………」
「…えっ…」
よくわからない態度を取っていたけど、快斗がはっきり好きだっていうのを、初めて聞いた。
「名前、俺にはまだ告白できない理由があったんだ。勇気もなかった。それでも、離したくなくて…焦ってた。
名前が元の世界に戻ったらどうしようとか、他のやつを好きになったらどうしようとか…でもお前は待ってるって言ってくれた。俺はその言葉に甘えすぎてたんだな。
永遠の言葉だと思ってたけど、そんなの無理だよな…俺が思い知らされた。ごめんな。でも決めたよ。名前と付き合いたい。告白できなかった理由は、まだ言えねえ。その理由に巻き込むかもしれねえ。優先するかもしれねえ。それでもいいなら、俺と付き合って欲しい」
その言葉に、涙が溢れてきた。
今まで、この快斗を待っていたのかもしれない。
何にも恐れず、自信に満ち溢れた怪盗キッドの様な快斗に、私は快斗だけではなく、怪盗キッドにも惚れていたんだね。
ずるいよ快斗
この世で1番かっこいい
「私は、その理由は知らなくていい。でも、応援するよ。よろしくお願いします…」
「…名前っ…!!大好きだ…っ!!」
快斗は真っ赤な顔で私に抱き着いてきた。
「ふふっ…ばか。私も大好き…」
告白できない理由、本当は知ってるよ。
でもここで言ったら、今までの快斗の悩みが皆無になっちゃうもん。
このまま知らないフリをしている方が、お互い幸せなのかもしれないね。
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