14-5
「ふぅ。今日の屋上は風が強いな。やっぱり寒い…」
快斗…どんな態度取るだろう。
きっと今日は見るだけ
またいつもみたく、降ろしてはくれないだろうな
そう思っていると、下から歓声が聞こえた。
来たんだ…
きっと、今ビルの中にいるんだ。
会えるかなあ。会えるといいな。
「…寒い…」
今日は、キッド遅いな
ビルの下を見ると、すでに客が散っていた。
…なんだ。見てない間に帰ったのか…
寂しいなあ
すごく会いたい
そんなことを考えていると、涙がでてきた。
「…キッドお…」
「どうしました?名前お嬢さん♪」
「っ!!!キッド!!」
「キッドですよ…?ふふ。こんな風の強い、寒い中で涙なんか流してはいけません、風邪を引いてしまいますよ。」
「…流してないよっ…」
「さあ、降りましょうか。こっちに来てください。」
「…うん…」
キッドの元へ行き、キッドに抱かれ一緒に降りた。
「今日は風が強いので、少し揺れますよ。ちゃんと掴まってて下さいね。」
「うん…」
なんでこんな優しいんだろう
怒ってると思ってた…
相変わらずのポーカーフェイスだし。
そう思うと、また涙がでてきた。
「う〜っ…」
「しょうがない方ですね…」
そういうと、親指で涙を拭いてくれた。
そういう細かい優しさが、涙を止まらなくさせる。
「今日はあのビルの隙間にしましょう。あそこなら風は強くないでしょうから。」
「うぅっ…」
そのまま、ビルの隙間に降ろされた。
「泣いてはいけませんよ…名前お嬢さん。可愛い顔が台無しです。」
「だって〜…なんで…そんな優しいの…」
「いつも通りですよ」
「ばかあ…ごめんね…」
「言っている事がめちゃくちゃですね…まったく…」
「うぅ〜」
泣いてる姿を見られたくなくて顔を手で覆っていると、その手をどけられたと同時に顔が近づき、一瞬何が起きたのかわからなかった。
「んっ…!?」
今…キスした…?
唇には温かい感触が残る。
「…今まで焦らしていましたからね…」
そう言ったキッドの顔は、少し寂しそうだった。
「……っ…」
恥ずかしくて、顔を見られたくなくて俯いた。
ちゅうした…ちゅうしたあああっ!!
どうしようどうしよう…!
「…そろそろ帰りますか?」
「…えっ…うん…」
「じゃあ、しっかり掴まってください?」
「…うん…」
今のちゅーはなんだったんだろ…
なんか…
同情してくれた感が凄かったな…
今更キスの話題にするにも恥ずかしく、
その話にはお互い触れずに家まで送ってもらった。
「…では。」
「うん、ありがとう…」
そのままキッドは飛んでいってしまった。
「…はぁ。」
ため息ばかり出続け、考えれば考えるほどわからなくなってくるから、寝ることにした。
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