07-1





「ついた…」

来た時の公園に戻ってきた。
まさか1年もたたずにまた帰るとはね。

でも秋に帰れるのかな…
やっぱり春じゃなきゃだめなのかな



でももう帰りたい。



でも少し、あの山で夜景を見てから行こうかな…



1人で登る山は意外と高く、静かだった。

途中で振り返らないのが俺なりのルールって言ってたっけ。



そのまま山頂に着き、空を見上げた。
真っ黒く、霞んだ夜空。


「今日の夜景はあんまり星が見えないな…」


ただ天気が悪いのか、私の気分で綺麗に見えないのか、2人で来たから今まで綺麗に見えていたのか。


こういう時に限って、楽しい事ばかりが思い浮かぶ。


ずっと上を見てると、心臓が痛くなったので下を向いた。


「…もうやだ…っ」


そのまま、誰にも見られないように泣いた。

誰も登っては来ないけど…泣いている自分が嫌で。



「…もう行こう…」


ようやく顔をあげ、下に降りて木の元へ向かった。


「さむっ…」



暖かい格好をしたつもりだったんだけどな。


秋の夜は意外と寒い。

木の元へ着くと寂しさが込み上げて来たが、私がいなくても時間は進む。


むしろ、私はいない方がいい。



きっとその方が平和に進んだ。
これでいい。




目を閉じて、木の下に立つ。



元の世界へ帰りたい…っ!!

意識を集中させていると、遠くから声が聞こえた。





「名前ーっ!!」

「快斗っ?!」

「名前!!どこ行くんだよ!」


会いに来てくれたと少し期待したのに…不機嫌…?


「なに!関係ないじゃん!!ここに立ってただけだよ悪い?!」


不機嫌な態度に、私もきつく当たってしまう。


「こんな一緒にいて関係ねーわけねぇだろ?!」


腕をぐっと引っ張られ、痛んだ。
いつもならこんな事しないのに。
それは、快斗も怒りを含んでいる証拠。

怒っているのは、こっちの方なのに。


「痛い!やめてよ!一緒にいたのにいきなり態度変えたの誰?!快斗でしょ?!ここに来たと思ったら何?いきなり腕引っ張って怒りだして意味わかんない!!」

「っ…わりぃ…」


腕をぱっと離した快斗は、悲しげな顔をしていて。
いつもなら慰めたくなるその顔も、今では何も感じない。



意外とすんなりなんだね。
態度冷たくしたって認めたって事だよね?



「もういいから帰って!!!この世界にいたくないの!!早く帰って!!!」


すんなり認めた事に腹立たしくも悲しくなり、大声をあげた。
こんなつもりじゃなかったのに。


「……」


黙ってしまった快斗は、無言でこっちに向かって足を進める。


「…な、何っ!!」


怖くなり後ずさりすると、すぐ後ろにあった木に背中がぶつかた。
もうこれ以上は下がれない。
なす術なく立っていると、右側の耳元で、ドンッと鈍い音が鳴った。

「……っ」

条件反射で一瞬目を瞑り、よそよそと目を開けると右側には快斗の腕。


それと同時に、ガサガサと一気に枯葉が舞った。



「…行くな…」

「…えっ…?」

「…帰ろうとしてたんだろ?元の世界に…」

「そっ…そうだけど…っ?」

「まじで頼む……ほんとに……行くな…」


快斗が言ったと思えないほど、弱い声。

表情は暗くて髪の毛で見えないが、声で本気だと伝わり、何も言えなくなった。


「…なんで?」



聞いた瞬間視界が揺らぎ、目の前が暗くなった。


暖かい…
快斗の胸だ。


背中に回された腕は、加減されつつ、力強かった。




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