06-1
言ったら何か変わってしまうのではないか。
私が現実の世界へ戻ってしまうのではないか。
快斗に会えなくなっちゃうんじゃ…
いつの間にか、現実に戻りたくなくなっていた。
友達や家族に会えないのは寂しいが、なんとか母と連絡はとっているし、こっちの世界でさらに奥深い友達ができた。
もし快斗にこれを暴露して、みんな知ってしまったら、みんなのことだから心配してくれて、現実の世界に帰りなさいって言われるんじゃないかな…。
「…名前?」
「んっ?あ、ごめん!秘密かあ…」
「言った方が俺との仲も深まるだろ♪」
深まるかな…
深まるんだったら言いたいけど…
言って大丈夫かな。
逆にチャンスなのかな?
段々わけわがわかんなくなってきて、つい口走ってしまった。
「…あのね、私、違う世界からきたの…!!!」
「…?違う世界…?」
「……!!」
快斗はいきなり私が大声を出したのと、わけのわからない事を言ったことによってびっくりした表情。
つい口走ってしまった…
ここまで来たら言うしかない…
「私ね…………」
今までの事を全部事細かにはなし、PCの画面も見せて、信じて貰った。
快斗を好きでこっちにきた事と、快斗がキッドだと知っている事はごまかした。
「……そうだったのか。ごめんな…無理やり言わせて」
「んーん…私も秘密にしててごめんね」
「それはしゃあねえよ。そんな事、あるんだな」
「うん、びっくりしたよ…」
「元の世界に戻る気はあるのか…?」
「今は戻りたいとは思ってないよ。いつか戻れたらなっ…って感じかな」
「そっか…」
どれくらい沈黙が続いただろう。
今だけは、一秒が一分に感じる。
そんな中、先に口を開いたのは快斗だった。
「今日はごめんな。話してくれてありがとう。初めての話だから、なんて言ったらいいかわかんねぇ…」
「んーんっ!全然!こんな落ち込むよーな話でもないし…っ!」
「俺、今日はもう帰るな」
「えっ…そっか…わかったよっ…!」
「じゃあな」
「ばいばい」
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