アリアからの手紙

突然姿を消してごめんなさい。どこに居るかを聞かれても答えられないの
しばらく貴方達と会えないでしょう

未来で私が病死すること、そして貴方と娘が命を捧げるのを夢で見ました。
幼い娘を残して行方知れずになっている私を許して下さい。それと白蘭と真六弔花にできるだけ協力してほしいの。

ユニの傍に居てやって下さい。
我が儘ばかりでごめんなさい。

     アリア





最初は、ボスの形見がただ生き者だというような、姫にはすまないが彼女の母アリアが亡くなったことを受け入れられず姫自身を直視できずに居た。

弱音を吐かず慈愛篭った笑みを向ける娘はあまりにも母親そっくりで、母親以上に眩しかった。

「ただいまγ、皆」
「お帰りなさい姫」

「姫、―――」
「はい?」

先代とは会えたのか、もしかして居場所を知っているのではないか
聞きたいことは他にもあったが、見上げるシアンの双眼に映った自分の顔を見るなり、喉まで出かかった言葉をヘソの下まで飲み込んだ。酷い面だ。
今日は陽射しだけ暖かく林からひやりと湿った空気が流れていた。日が傾く頃に一雨来るかもしれない。

「…風がお体に障ります。どうぞ中へ」
「はい。ありがとうγ」

腹の高さで揺れる白い大きな帽子から体が生えているようにも見えた。その胸にはきちんと橙色のおしゃぶりが提げられている。切り揃えられた芝生を軽い足音だけが聞こえる間、姫はなにを考えただろうか。人間の心はマニュアルに当て嵌めて通じるものではない
昔からわかりきったことにも関わらず、口に出たのはずるい話題だった。



「……γ?」
「姫はどこまで行く覚悟があるのか、聞いてもいいか?」
「ええ」

代々伝わる予知する力で見た運命に身を委ねる神子でありつづけるのか。

「私がユニで在り大空のアルコバレーノとして生まれたことは宿命です。大空のアルコバレーノを母から継承し、ボスとして立ちトゥリニセッテを守り、自身も手を血に染める覚悟があり、またその運命を受け入れました。」


運命は変えられるのだと母から教わったけれど今まで抗ったことがありませんでした。「十数年しか生きていないのに長い時間を見てきた気分はどうなの」白蘭に初めて会ったとき、γに想いを伝えて部屋に入って開口一番聞かれたこと。
「とても長い間、恋をしているのと似ていると思います。」



母の使っていた部屋に入ると懐かしい香りがした。此処に母が居た名残を辿ると普段使っている香水とアマドコロが置いてあった。
私がこれを使ったら彼は悲しむのでしょう。あなたを困らせる一緒に居るための口実作り。ライバルが母だなんて皮肉です。帰ったら少し我が儘を聞いてもらおう。














da capo様へ提出
滑り込みですみません
ありがとうございました!
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