それから、風のそよぎを聞きながら2人で数時間語り合っていた。実際、話出すのも話しているのもほぼルーチェなのだが、それでも会話は続いていた。
俺にしては珍しいことである。



そして時折、話している間にコロコロと変わるルーチェの表情に目を奪われた。呼吸さえ忘れてしまうほど、見入り、胸がざわつく。


「……この大空みたいだな」


「ん?何か言った?」


「何でもない。」

言葉にしたら何故だか少し満足した気分になって、草むらに寝転がった。





晴れ渡る青空の、あまりの眩しさに目を細める。
そしていつもならここですぐに帽子で視界を黒に染め上げるが、今日は隣で空を見つめているルーチェにならって少しの間見上げてみることにした。





















「ねぇ、ずっと思っていたんだけど、黒スーツでいて暑くはないの?」


唐突に質問を投げかけられた。
青空からルーチェに視線を移すと、彼女は俺を見降ろす形で小首を傾げていた。小柄なルーチェを見上げることはとても珍しく、むしろ今回が初めてだったから、つい、見つめてしまった。


「…これくらいなら別に。」


「でも少しは暑いんでしょう?」


ずい、と目の前まで顔を近づけてきたルーチェに、鼓動が一つ、大きく鳴る。次いで頬や耳に熱が集まってきたように感じ、それらを隠すように帽子を深く被り直して少し視線を外しながら答える。

こんな初心(うぶ)なガキのような反応をしてしまう自分が情けないような、歯痒いような…なんとも格好がつかない。






そんなことを頭の隅で考えていると、彼女がもそもそと動き出し、俺のスーツのボタンに手をかけてきた


「お、おい!!」


「なら、そんな黒いスーツなんて脱いでしまいなさい!!」


そう言って、子どもがイタズラをするような笑みを浮かべながら、俺の反論も聞かずにルーチェはあっという間に脱がしにかかってきた。

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