短編 | ナノ







「ねぇ哀ちゃん、惚れ薬作ってよ」

「貴女、一体私を何だと思っているのよ」

コナン君に私の正体をバラしてから数日後、灰原哀ちゃんにも私の正体をバラした。信じてくれるか分からなかったけど哀ちゃんも私の話しを信じてくれた。コナンくんも哀ちゃんも良い子だ。中身は同い年くらいだけど。

哀ちゃんに私の正体をバラした理由は彼女にお願いがあったからなのだ。安室さんに告白できない私は哀ちゃんに惚れ薬を作ってもらう事にしたのだ。身体を幼児化する薬を作れるなら惚れ薬とかも作れるよね?と聞いたら深いため息が返ってきた。

ため息で可愛いなんて思えるのは哀ちゃんくらいだよ。そんな事考えてたら哀ちゃんから質問を投げかけられた。

「吊り橋理論って知ってるかしら?」

聞いた事ない言葉に私は首を傾げる。

「わかんない」

「異性と2人で吊り橋を渡るとそこで生じた緊張感が恋愛感情と誤認するの」

「………」

「つまり男女が2人で吊り橋を渡ると、橋を渡る緊張のドキドキが恋愛のドキドキと脳が勘違いを起こすって事よ。恋愛感情を抱きやすくなるの」

「なるほど!」

難しい言葉が理解出来なかったのを察したのか、私にも分かりやすく説明してくれた。さすが愛すべきツンデレ。なんだかんだで世話を焼いてくれる哀ちゃんのそういう所好きだよ。

すると哀ちゃんはチャック付きの透明な小袋を取り出す。それは手に収まるくらいのサイズで中には錠剤が一つ入っていた。それを私の目の前に置く。

「これは惚れ薬じゃないけど、さっきの吊り橋理論と同じような作用があるわ。そんなに強い薬じゃないから効果あるか分からないけど、これを貴女が好意を寄せる人に飲ませられればチャンスがあるんじゃない?保証はできないけど」

「え?くれるの!ありがとう哀ちゃん!」

感謝のつもりで抱きつくと嫌そうにやめなさいよ、と怒られた。嫌がる姿もまた可愛い。

私は阿笠博士の家を出て、るんるんとステップを踏みながら帰路に着く。哀ちゃんから貰った錠剤が入った小さな袋を空に掲げながらさっそく安室さんに飲ませようとポアロへと向かった。


思い立ったら即行動の私だけどポアロの前で立ち止まる。

ちょっと待って、これどうやって安室さんに飲ませればいいの?相手はあの安室さんだよ。安室さんじゃなくてもいきなり薬飲んでって人から言われたら警戒するよね、普通。うーん、元気になる薬って言えば飲んでくれるかな?



『安室さーん、これ飲んでください!元気になるお薬です!』

『元気になる薬ですか?トリプルフェイスの僕にぴったりの薬ですね。ありがとうございます、なまえさん』

ぱく、ごっくん。

『………。なんだか……急になまえさんのことを襲いたくなりました。大人しく僕に食べられて下さい』

『あ、安室さん、駄目です。私達まだ付き合って無いじゃないですか。まずは手を繋ぐ所から始めないと…』

『口では否定はしても本心では僕に食べられたいんでしょ?』

『あっ…駄目、そこっ……』

『駄目?なまえさんのココはとっても喜んでますよ』

………。
おっと、いけない願望が溢れてしまった。あくまでドキドキするお薬だよね。危ない、危ない。元気になる薬って言って飲ませたのに違う所を元気にしてしまったよ。

妄想はさておき、足りない頭を捻って三日三晩考えた結果私はある作戦を立てた。



「安室さん、貴方に言わないといけない事があるので仕事終わりにお話ししませんか?」

作戦実行の日ポアロに向かった私は安室さんにそう言った。今まで安室さんは見逃してくれているのか私に何も聞かないでくれていた。でも色々怪しい言動をとってる私からこんな事言われたら乗ってくるよね。

「いいですよ、なまえさん。僕も貴女に聞きたい事あるので」

「ならコーヒーを飲みながら話ししませんか?2つ持ってきて下さい!安室さんの分は私の奢りです」

「わかりました。ちょっと待ってて下さい」


しばらくして安室さんの仕事が終わり、2人分のコーヒーを私が座っている席に持ってきてくれた。そしてトレイを返しに安室さんが振り返ったその隙に私は哀ちゃんからもらった錠剤を向かい側のコーヒーに入れる。安室さんを見るとまだ私に背を向けていたから薬が入っているのはバレていないはずだ。

戻ってきた安室さんは私の向かいに座り、薬入りのコーヒーを一口飲む。やった!作戦成功だ。心の中で喜びながら私もコーヒーを飲んだ。

「それでなまえさん話しと言うのは……」

話しながら安室さんは伝票を丸めて伝票入れに入れようとした。しかし上手く入らず安室さんの手が当たり、円柱型の伝票入れが私の方へコロコロ転がる。そしてテーブルの下に落ちてしまった。

「すみません、なまえさん」

「大丈夫ですよ」

私はコップを置いて席を立ちしゃがんでテーブルの下を探す。奥の方にあった伝票入れを取り元の場所に戻した。再び席に座り私達はまたコーヒーを飲み始めた。


今日も安室さんが入れてくれたコーヒーは美味しい。そろそろ薬の効果が出始めたかな?

「どうですか?安室さん」

「どうとは?」

「いえ、何でもないです…」

安室さんのコップの中を見てみると少ししかコーヒーが残っていない。あれれ?効かなかったのかな?それとも、もうちょっと後から効くとか?

もしかして哀ちゃん間違えてアポトキシン4869の解毒剤渡しちゃったとか?いや、そんな事ないか。あれ飲んだらドキドキどころかバクバクちゃうよね。それに安室さんは幼児化してないし。幼児化した安室さんを生で見てみたいけど。


変な質問したせいか安室さんにジッと見つめられる。でも普通に考えて、今安室さんと2人っきりでお茶してるんだよね。もしかしてこれってデート?ちょっとは私の事意識してくれないかな?うわ、やばい。デートとか考えていたらこっちがドキドキしてきた。

「どうしました?なまえさん顔が赤いですよ」

「空調が効きすぎたのかもです」

貴方がかっこよすぎてドキドキしているんです。なーんて言えればなぁ。本当に綺麗な顔してる。中身はバンジーした後、コナンくんを投げ飛ばすゴリラだけど。

「そうですか。僕はてっきりなまえさんが盛った薬の効果で顔が赤いのかと思いましたよ」

「……え!?」

安室さんの言葉に頭が追い付かなかったが、数秒後私は理解した。

ばれてるー!
え?いつ?てか、薬を盛った効果って事はこのドキドキは薬のせい?そういえば、いつもよりすごく心臓がドキドキしている気がする。

薬の事を知ってるって事はコップをすり替えられたの?私がコップから目を離したのは安室さんが伝票入れを落としてそれを拾ったあの時だ。もしかしてあの時に?伝票入れ落としたのもわざとか!


「それでなまえさん。薬を盛る事は犯罪です。僕が警察官だったら逮捕されますよ」

警察じゃないですか、公安警察だけど。安室さんになら逮捕されたいです。あ、でもこの場合逮捕するなら降谷さんの方かな?ドキドキしすぎて息苦しいし頭がぼーっとしてきた。

薬の効果と安室さんの顔せいで私の心臓は保たないかもしれない。私が死んだら『死因、降谷零』って書いてほしいな。めちゃくちゃ良い死因じゃん、誇りに思うよ。いっそ死亡診断書を天国に持って行って、安室の女たちに見せたいね。もう一回殺されそうだけど。

きっと血祭りにされちゃうね。
あ、死んでるから血は出ないか。


安室さんはニコニコ笑ってはいるが本心は分からない。それでも、イケメンなのは相変わらずだった。



20.1024
話しが増える度にあほさが増す系ヒロイン
ちなみに安室さんは一口飲んでから薬に気づきました。
願望シーンはぬるい裏かな?
まぁナニを想像したかは皆さんの想像にお任せします笑


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