短編 | ナノ







青い空と海、白い砂浜。
夏の日差しがジワジワと肌を焼く。

「うわー綺麗な海!」

「なまえさん、あんまりはしゃぐと転びますよ」

私は集団から外れ1人先に海へ飛び出す。その後を安室さんが心配そうについてきてくれた。


今日はみんなで海に来ていた。発案者の園子ちゃんを筆頭に、コナンを含めた少年探偵団、蘭ちゃん、服部くんに和葉ちゃん、父である毛利小五郎に、捜査一課の皆さん、そして安室さんと私。

ずいぶん大人数で来たがこんなメンツで海に来るとは、むしろ事件を起こそうとしているんじゃないかとさえ思う。


「警視庁捜査一課の方々もいらっしゃるとは…」

「園子ちゃんが誘ったら日帰りの慰安旅行って事で来たらしいですよ」

「なまえさんも楽しそうですね」

「楽しいですよ涙のイエスタデーって感じで」

安室さんは分からないと言いたげに首を傾げる。そうか知らないよね。まだ本編に出てなかったし。そういう事じゃないけれど。

そんな私達を尻目にみんなはビーチバレーをしていた。小学生対高校生なのに中々白熱しているようだ。コナンくんがボールを蹴ろうとするといつもの3人がすごいスピードでコナンくんに突っ込む。結局トスしたのは歩美ちゃんだった。

「おぉ!あれが噂のターボ歩美ちゃんか」

よくネットで言われている加速した歩美ちゃんを生で見れて私は歓喜の声を上げる。

おっといけない。あまり口に出すのはいけないよね。



遡る事数ヶ月前、私はある日突然車に轢かれていつの間にかこの世界へとやって来たのだ。所謂トリップってやつである。しかもこの世界は前の世界であった漫画の名探偵コナンの世界。原作を読むほどファンだった私にはご褒美しかなく、前の世界の未練もなくこの世界を満喫していた。

この世界での私は蘭ちゃんの姉らしく、19歳で毛利探偵事務所の秘書として働いている。トリップしてから毛利なまえとして生きてきた記憶もあるのでおかげで周りにバレずに上手く生活できていた。


私もビーチバレーに参加したが小学生相手にボロ負けしたのですぐ交代する事になった。小学生相手に情けないと思いながら1人みんなと離れて波打ち際を散歩する事にした。でもあまり遠くに行くと迷子になるのでみんなから見える位置でしゃがみ込む。足元にはさざ波が打ち付けて気持ちがいい。波に乗って棒が流れてきたのでそれを取り砂浜に落書きをしてみた。波打ち際だからすぐに打ちつける波が私の粗末な絵を消してくれる。

「そうだ!」

すぐ波が消してくれるし、これくらいいいよね。

私は相合傘を描き名前を書く場所に降谷零、その隣に毛利なまえと書いた。

「えへへへ」

私は前の世界では安室透こと降谷零の大ファンだった。グッズを集め彼がアニメに出演した時はリアルタイムはもちろん録画した物を何回も見たものだ。この世界にきて実際に彼に出会った時は一瞬で恋に落ちた。でも想いは告げられず絶賛片思い中である。

安室透も好きだけど、どっちかって言うとクールな降谷零の方が好きなんだよね。それでよく公安が務まるな、って冷めた声で言って欲しい。私は公安じゃないけど。
あーでもセクシーなバーボンも捨てがたい。銃向けられて僕と一緒に来てもらいますか、なんて最高じゃない?喜んで付いていくよ私なら。


「何してるんてすかなまえさん」

「うぎゃあ!」

急に安室さんに声をかけられて汚い悲鳴が出る。瞬時にヤバイと思って落書きにダイブした。あぁ…きゃっ!なんて出せればよかったのに。でも鈍臭い私にしてはとっさに相合傘を隠せたのは偉い方だと思う。

慌てて安室さんを見上げると海パンに薄手のジャケットを羽織っていた。程よく鍛えられた身体に色黒だから海がよく似合う。かっこいいなぁ、生きててよかった。

ってそんな事考えている場合では無い。私が彼の本名を知ってたらどんな目に遭わされるか想像しただけて鳥肌が立つ。


「あ、あむ、安室さん!いつからそこに?見ました?」

「今来ましたし何も見てませんよ。大丈夫ですか?驚かせてしまいましたね。すみません、せっかく何か書かれていたのに消えちゃいましたね」

私が相合傘の落書きにダイブした事とちょうど大きな涙が来たことにより、私が描いた落書きは消え去っていた。安室さんの様子を見ても見てないらしい。

よかったバレてないみたいだ。セーフセーフ。
もし見られてたら恥ずかしくて死ねる。私が片思いしてるのバレちゃうじゃん。その前に尋問されそうだけど。


「いいんです!下らない落書きなんで!」

「そうなんですか、ところで…こんな所に個人情報を晒すのは駄目ですよ。誰が見てるか分かりませんからね」

「え!?」

あれれ〜おかしいぞ?さっき見てません、って言ってたよねこの人。しかも目と声が降谷零になってません?気のせいかな?

「あはは〜何の事ですかな〜」

下手くそな芝居をしつつ内心冷や汗をかきながら私はこれ以上追求されないようにみんなの所へ駆けて行った。







20.0914
トリップヒロインはあほの子ちゃんがいい
涙のイエスタデーは名オープニング曲
知らない人は見てみてね
あと夏の幻、Start in my lifeも好き


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