なまえさんが安室さんに1番愛されてる時ってどんな時ですか?
園子ちゃんが突拍子もなく言うもんだから私は思わず飲みかけのミルクティーを吹き出しそうになった。
久々に昼食を外食で済ませようと決めた私は自然とポアロに来ていた。ドアを開けると看板娘の梓さんが出迎えてくれる。
「なまえさんいらっしゃい。安室さんなら今買い出しに行ってもらってるんです」
「そうなんですか。でも今日はポアロのランチを食べに来たので、大丈夫ですよ」
店内を見渡すと客が少なく心地よい音楽が流れてる。客の1人が私を見つけると勢いよく手を振ってきた。
「あ!なまえさん久しぶりーこっちに一緒に座ろう」
そこには向かい合って座る蘭ちゃんと園子ちゃんがいた。今日は日曜日なので学校は休みなのだろう。2人がいる席に向かうと園子ちゃんが立ち今座ってた席に促してくれた。
「いいの?2人の邪魔にならない?」
「私達なまえさんと喋りたかったんです。ご迷惑じゃなかったら一緒に座りませんか?」
「女子会しましょう女子会!」
可愛い2人のお誘いに私は座る事にした。園子ちゃんは蘭ちゃんの隣に座り私と向かい合う形になる。梓さんがお水を持ってきた時に私はミルクティーとポアロ特製ランチを注文した。
初めは単なる雑談だった。
学校のテストが近いとか、近所に出来たケーキ屋が美味しかったとか。2人の話を聞きながらランチを食べ終え、食後のミルクティーを飲んでいる時に園子ちゃんの質問が来たのだ。
「あ、愛されてる時?」
吹き出さなかった自分を褒めてあげたい。
テーブルの端っこにある紙ナプキンを取り軽く口元を拭くと改めて2人を見た。
「真さん最近連絡全然なくてさー」
「新一も連絡来ないし落ち込んじゃう」
さっきまで明るかった2人の表情が一気に暗くなる。恋をすると強くもなるし弱くもなるから厄介だ。想い人が近くにいる私とは違い2人共遠くにいるから尚の事辛いだろう。
「その点、安室さんは連絡マメそうですよね」
「うーんどうかな透も遠距離になったら意外と連絡してこないかもよ」
事実、何日間も連絡取れない事は多々ある。最初は寂しくて仕方がなかったが今はもう慣れてしまった。時の流れとは恐ろしいものである。
「なんかさー時々試してみたくありません?本当に私の事好きなのか」
「まあ園子の気持ちもわかるよ」
相手の気持ちを疑うと言うより彼女達はきっと自分に自信がないのだ。私も時々そう思うからよくわかる。
「そうだね、試したいって思っちゃうよね」
「じゃあ試してみたらどうですか?透なんて嫌い!別れてやるーって」
「もう園子ったら。そんな事なまえさんは冗談でも言わないでしょ」
「でも女の子なら引き留めてもらいたいじゃないですか!そうですよねなまえさん!」
「そ、そうだね」
園子ちゃんの熱の入った気迫に思わずたじろぐ。
零の場合別れようと言った暁には拘束され監禁されそうだ。私は表向きは死んだ事になっていて外界との接触を一切断たせるだろう。そしてあの輝いた笑顔で彼の飼っている犬のハロと同じ首輪を用意して
「ハロとお揃いです。嬉しいでしょう?」
なんて本気で言いそうだ。
そこまで想像できるもんだから別れようなんて口が裂けても言えない。さっきまで空調は丁度よかったのに想像してたら寒気がしてきた。
「でもなまえさんが羨ましいです。安室さんって超優しそうだし」
「そんな事ないよ意外とああ見えて、ねちっこいよ。嫉妬深いし。この前こっそり昴さんの所に行ったらすぐバレて次の日までずーっとお説教だったんだから」
「へー安室さんが…」
「なんか意外ね」
「楽しそうですね」
唐突な第三者の登場に私は肩が跳ねる。声の主を見てみると今話題になってた安室透だった。後ろから来たので気付かなかった。聞かれてた?そんな心配を余所に零は私達のテーブルに3人分のケーキを置く。
「これ僕からのサービスです」
「美味しそうなケーキ!」
「安室さんありがとうございます」
蘭ちゃんと園子ちゃんがケーキに見惚れてる間彼の顔を伺う。零は私と目が合うと笑顔を崩さず口開いた。
帰ったら覚えておけよ
「ひっ!!」
「なまえさん?」
「どうしたんですか?」
いきなり怯えた私を不思議そうに2人は見る。零はそんな私を無視してカウンターへと戻って行った。声を出さなかったから今の言葉は私にしか伝わってないだろう。
「なんでもないの!さ、食べよう」
聞かれてた、あぁ…帰りたくない。
帰ったらキツいお仕置きが待っている。
そんな現実から逃れる為にケーキを食べながら心の中で私は深いため息をついた。
20.0828
少々歪んでる降谷さんが好き
ゼロティー読み返したらハロに首輪ありませんでした
すみません
お揃いで買ってきたってことでお願いします
≪|≫