短編 | ナノ







本日、快晴

「お前ら動くな!」

時々銀行強盗

「よし、そこのお前こっち来い!」

のち人質。



とある日の休日、私はコナンくんと阿笠博士の家に向かっていた。少年探偵団の皆んなで遊ぶから…では無く保護者として監督するからだ。

途中でお金の持ち合わせが無いと気づいた私は近くの銀行でお金を降ろす事にした。銀行に入りATMに並んでいると突然1人の男の人が声を張り上げ、銀行強盗事件が発生してしまった。コナンくんがいると銀行強盗に巻き込まれそうだからわざわざ外に待たせていたのにも関わらずだ。一緒に住んでいるから私にも事件を呼び寄せる体質が移っちゃったのかなぁ。

銀行強盗が押し入った瞬間、私は原作を思い出して期待しながら火傷の赤井さんを探した。けれど当たり前だが見つからなかった。

そうだよね、ここにはジョディ先生も少年探偵団もいないし安室さんがポアロにいる時点で終わった話しなのだ。あーあ、赤井さんに変装した安室さん見たかったなぁ…。好きな人の姿はどんな姿でも見たいじゃん。それが殺したい程憎んでいる赤井さんに変装している安室さんでもさ。

なーんて考えていたら犯人からのご指名で人質になってしまったのだ。赤井さんに変装した安室さんを見れなかった事に加えて人質になってしまった私はつい、ため息が出てしまう。


「はぁ…」

「テメェ!何ため息吐いてんだ!少しは人質らしく怯えていろ!」

「すみませんね、こっちはラブコメ死神名探偵くんと同居してるせいで、死体だの銀行強盗だの慣れちゃったんですよ。ちょっと待って下さいね、今初心を思い出しますから」

確か初めて銀行強盗に遭遇した時は…

『わーすごい!拳銃もってるよ!さすが米花町、銀行強盗も拳銃持つんだなぁ。後でちょこっと触らせてくれないかな?ついでに撃たせてくれたらもっと嬉しいんだけど』

……駄目だ。初めて銀行強盗遭遇した時はワクワクしちゃったんだ。あれは遠足の工場見学みたいなノリだったよ。最近はもう慣れちゃったからそのワクワクも無くなっちゃったんだよね。よくスマホも没収されるから早く終わってイジりたいな〜帰りたいな〜ぐらいにしか思わなくなっちゃったよ。慣れって怖いね。


犯人のおじさんは私の後ろに回って拳銃を私に突き付けている。背後にいて近いせいかおじさんの体臭が臭う。あーあ、変装した安室さんは見れなくてもいいからこんなおじさんより、安室さんの人質になりたかった。めっちゃいい匂いしそう。ここぞとばかりに嗅ぐよ私は。前にトリプルフェイスの香水発売してたけどその時は高校生だったからお金が無くて買えなかったんだよね。本物を嗅げるとかご褒美かな?

でもこんなに密着してたら鼻血で出血多量で死んじゃうかも。うわ、安室さんに後ろから抱きつかれるなんて興奮しちゃう。

「うへへへ」

「何笑ってんだよ!殺されてぇか!」

「死ぬのは嫌だけど、次死んだらバーボンに口説かれる設定のはずなんで……それはそれで魅力的ですね…」

神様もあの胸焼け設定覚えているかな?直接会ったらすぐに伝えられるように頭の中で練習しておこう。

えっと、ベルモットに超愛されてて…

「何訳の分からねぇ事言ってんだ、こっち来い!」

「うわぁ!ちょっと急に引っ張らないで下さいよ」

あーもう、今大事な練習中だったのに。


お金をリュックに移してそれを背負い、用が終わった犯人のおじさんは私を引っ張りながら外に出る。銀行の外に出ると警察が周りを固めていて一気に注目を浴びた。マスコミや野次馬もいてカメラを一斉に向けられる。


うわー結構大事になっているんだなぁ…。あ、テレビカメラ発見!こんなおじさんとじゃ無くて安室さんとのツーショットを撮って欲しいね。ニュースに流れるなら録画してDVDにもダビングにしてスマホの待ち受けにしなくちゃ。

でも安室さんが銀行強盗だとして、欲しい物ってなんだろう?私でよかったら用意するのに。うーん、赤井さんの首か日本とか?やばい、どっちも用意できないじゃん。難易度もスケールもデカすぎるよ。


外に出た所でコナンくんと目が合う。どうにかしてよ、とアイコンタクトを送るとすぐに時計型麻酔銃で犯人に標準を合わせた。良かったサッカーボールが飛んで来なくて。犯人に当たるだろうけど一緒に飛ばされる所だったよ。

パシュ、っと聞き慣れた発射音と共に私に銃を突き付けていた犯人は情け無い声を上げて私を巻き込む形で倒れ込む。

ちょっと止めてよ、押し倒されるなら安室さんにされたかったのに。


犯人が急に気を失った為、警察の人が駆け寄って来て助けに来てくれた。ようやく自由の身になれた私は警察の人とやり取りをしてコナンくんの元へ帰ってきた。


「ありがとう、コナンくん。貴重な麻酔針使ってくれて。もし今日事件が起きたら私が探偵役になるね」

「いや、これも事件だろ」
 
あ、そうかこれも一応事件か。慣れすぎて感覚が麻痺しちゃってるよ。慣れって本当怖いね。

「それにオメーは探偵役に向いて無さそうだしよ」

「失礼な!私だって演劇経験者なんだよ。見事な演技力だってみんなに褒められたんだから。口パクだって見事に演ってみせるよ!」

戦争の劇で死体の役だったけどね。


こうして私を巻き込んだ銀行強盗事件は、犯人の謎の意識不明により解決したのだった。





数後日ポアロにて、コナンくんと一緒に銀行強盗に遭遇した話しを安室さんにしていた。

「それは災難でしたね、なまえさん」

「そうなんですよ、すっごく怖かったんですから!」

一緒にいたコナンくんは嘘だろオメー、みたいな顔してた。まぁ…色んな事考えていたから締まらない顔してたけど、私だってちょっとは怖かったよ。次死んだらバーボンに迫られる設定になるか不安だしね。


安室さんはあの薬の件以降も普通に接してくれている。見逃してもらっているのは有り難いけど、ちょっと甘やかしすぎじゃない?私なんて御しやすいからそれ程障害にならないと思っているのかな?


「ですが早めに解決したらしいじゃないですか。僕としては突然起こった犯人の意識不明の方が気になりますけどね」

安室さんはコナンくんを見ながら言っている。ヤバイ、時計型麻酔銃の事バレてるんじゃないの?私はコナンくんの秘密を守る為に慌てて話題をすり替えた。

「安室さんがいたらもっと早く解決したはずですよ!銃の扱いとか上手いじゃないですか。拳銃で銀行強盗の肩をバーン!って」

赤井さんに変装していた時、襲われたコナンくんを助ける為、銀行強盗を撃っていた事を思い出した。私はその場にいなかったから漫画やアニメでしか知らないけど実際に見てみたかったな…とか考えていたら安室さんもコナンくんも黙って私を見ていた。


あ、またやってしまったかもしれない。


「いや、ほら私のハートをいつでも撃ち抜いていますよ!って言う意味ですから!」

最早、フォローすらなってない意味不明な言葉を言いつつお金をカウンターに置く。

「じゃ!ご馳走様でした!失礼しまーす」

安室さんの追求を受ける前に、コナンくんの手を引いて逃げるようにポアロを去って行った。



「オメー気をつけろよ、今のはヤバかったぞ」

探偵事務所に続く階段を上りながらコナンくんに窘められる。コナンくんは知らないけど結構やっちゃってるんだよね、私。

「頑張って気をつけてはいるんだけどね。ついポロッと…。もう何度目だろ、安室さんに見逃してもらっているのは」

そんな優しい所が好きなんだけどね、そう付け足すとコナンくんはうんざりとした表情でへいへいと返ってきた。


でもコナンくん無しで事件に巻き込まれるなんて思ってもみなかったな。いつ死んでも良い様にコードネームでも考えておこうかな?こっちに来る時も急だったし、準備は必要だよね。カッコいいお酒の名前って何があるんだろう?

思い立ったら即行動派の私はこの後スマホを片手にコードネームを決める為お酒の名前をひたすら調べていたのだった。



20.1209
緊張感ゼロヒロイン。
銀行強盗に遭っても自分の世界に入っているからある意味無敵。安室さんの出番少なくてすみません。火傷の赤井さんが、安室さんの変装とかあの時はびっくりしたよね。


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