20mann | ナノ


▼ 独占欲

"赤い、紅い血が見たい。


だから私に処女の血を寄越せ"



私の前に表れた、吸血鬼さんはそう言った。
私の中での吸血鬼は、ヴァンパイア。伯爵…黒い髪…赤い目…凍るような冷たい皮膚…
そんなイメージだったんだ。そう想像していた…

だけど、この人は違う。


"伯爵?そんなの迷信さ"

"私は元から金髪さ…そんな汚い暗い色は嫌いだ"

"心臓はある。触ってみるか?"


伯爵でもない。ただの貴族だったという。
平民と同じ生活もしていたらしいし

黒い髪なんかじゃなくて透き通るような
クシ通りも良い。綺麗な綺麗な金色の髪の毛。
ちゃんと手入れもしてある。


心臓はある。
鼓動のひとつひとつが聞こえ、
ちゃんと動いてた。
肌だって白いキャンパスみたい、と思ってたのに
白人らしい白さで染みひとつない。
瞳は、蒼い。
たまに月夜を見るときに紅くなるだけだ。

わたしの思っていた、吸血鬼とは違った。
まるで人間みたい。






ただひとつだけ、


この人は私の処女の血を欲しがるんだ




おかしいくらいに。


毎晩毎晩、私の手を擦り、微笑を洩らしながら
私のベッドへ来ては私の顔を眺める


「いつかは、貰うぞ」

「奪って見せてよ」

"その美しい赤い血を"


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