▼ 独占欲
"赤い、紅い血が見たい。
だから私に処女の血を寄越せ"
私の前に表れた、吸血鬼さんはそう言った。
私の中での吸血鬼は、ヴァンパイア。伯爵…黒い髪…赤い目…凍るような冷たい皮膚…
そんなイメージだったんだ。そう想像していた…
だけど、この人は違う。
"伯爵?そんなの迷信さ"
"私は元から金髪さ…そんな汚い暗い色は嫌いだ"
"心臓はある。触ってみるか?"
伯爵でもない。ただの貴族だったという。
平民と同じ生活もしていたらしいし
黒い髪なんかじゃなくて透き通るような
クシ通りも良い。綺麗な綺麗な金色の髪の毛。
ちゃんと手入れもしてある。
心臓はある。
鼓動のひとつひとつが聞こえ、
ちゃんと動いてた。
肌だって白いキャンパスみたい、と思ってたのに
白人らしい白さで染みひとつない。
瞳は、蒼い。
たまに月夜を見るときに紅くなるだけだ。
わたしの思っていた、吸血鬼とは違った。
まるで人間みたい。
ただひとつだけ、
この人は私の処女の血を欲しがるんだ
。
おかしいくらいに。
毎晩毎晩、私の手を擦り、微笑を洩らしながら
私のベッドへ来ては私の顔を眺める
「いつかは、貰うぞ」
「奪って見せてよ」
"その美しい赤い血を"