星になるための仮眠 | ナノ



泣く泣く帰った私と母上は、前々から決めていたある人物に助け船を頼ることに決めた。母上はなんとしても自分一人で兄さんを牢から出したかったらしく、感情が籠った声で少し涙目だった。『悪霊』のことも気にしていたみたいで私に何度も何度も聞いてきた。やはり母上には見えていたんだ。アレが……

わたしだって兄さんと母上、三人で家に帰りたかった。
『悪霊』なんて信じない。あれはきっと兄さんの守護神だよ。
兄さんと早く一緒に居たいよ。
私と母上だけではこの家は広すぎるから



◆◆◆◆

「パパ、どうすればいいの?」

「よしよし、可愛い娘よ。このジョセフ・ジョースターが来たからには安心しろ!まずは早く会いたい…」

「我が孫の承太郎に」

そう言ってパチンと指をならし、一人の男を従え、兄さんのいる拘置所へと歩き出した。

そう。助け船というのは、母上のお父さん…
私の祖父に当たる、ジョセフ・ジョースターだ。

男手の居ない我が家には頼りになれる存在。
暫く見なかったけど、変わらない出で立ちだ。

「久しぶりじゃな。襄…大きくなって。ますますホリィに似て美人になって」

「ありがとう…ジョセ爺(じい)」

祖父の大きな背中に手を回し、アメリカ式のハグをした。
相も変わらず私の家系は顔立ちが整っていてかっこいい。包容力がある。 

「お前も…見えたんだな?悪霊が」
「うん。まだちょっとしか見てないけど…手みたいなの、見えた」

見えた、と言えば良いのか分からないけど祖父に伝えるとジョセフ(祖父)は小さく、険しそうな顔でそうか…と呟いた。

拘置所に着くと、前と変わらない雰囲気が漂う。
まだ兄さんは出てくる気はまだ無いらしく、前以上に物が増えていて兄さんの周りには自転車から飲み物らしきものまで…色んな物が散乱していた。

「か…彼には…な…何か恐ろしいものが取り付いている…」

「大丈夫…孫はわしがつれて帰る」

慌て怯える看守にジョセ爺は落ち着いた様子で大丈夫と話しかけるすると兄さんが此方に反応を見せた。
ここで説得してくれと、危険だ、と言い放つ看守をジョセ爺はグンと摘みあげ私たちから離れさせた。雰囲気はまだ重いままだ。


「おじいちゃんといっしょに出て来て!」

母上がそう兄さんに言うと、兄さんは険しい顔つきで此方に一歩一歩歩み寄ってきた。
ジョセ爺も兄さんの方へと足を進め、兄さんのいる監房の前で足を止めた。

「出ろ!わしと帰るぞ」

「消えな」

二人は顔を見合わせる形で会話をする。
すごい迫力に飲み込まれそうになる。私はゴクリと唾を飲み込んだ。

「およびじゃあないぜ…おれの力になるだと?なにができるっていうんだ…ニューヨークから来てくれて悪いが…おじいちゃんはおれの力にはなれない…」

ふと兄さんの手に目をやればジョセ爺の左の義手の小指を持っているではないか!いつの間に…!早すぎる。前の悪霊は私には見えなかった。

「見えたか?気づいたか?これが悪霊だ」

驚くジョセ爺の顔を見て兄さんは背を向け小指をポイと放り投げた。

「俺に近づくな…残り少ない寿命が縮むだけだぜ」

そう言って兄さんはまた牢に戻ってしまった。
再び沈黙が走る。仕方ないとジョセ爺はある人物を呼んだ。

先程から私たちと一緒に行動していた、褐色の男性。
その男の名は「モハメド・アヴドゥル」
ジョセ爺が三年前に知り合ったエジプトの友人らしい。

「アヴドゥル…孫の承太郎をこの牢屋から追い出せ」

「やめろ。力は強そうだが追い出せと目の前で言われてすなおにそんなブ男に追い出されてやるおれだと思うか?いやなことだな…逆にもっと意地をはってなにがなんでも出たくなくなったぜ」

「ジョースターさん………少しょう手荒くなりますがきっと自分のほうから「外に出してくれ」とわめき懇願する位苦しみますが」

アヴドゥルとかいう男の目は本気だった。
起き上がった兄さんの方をギラリと睨みつけ、ジョセ爺に許しを請うていた。
ジョセ爺は帽子の鍔を親指であげて、アヴドゥルに「かまわんよ」と許しを出した。
これは本気でヤバイやつでは…!?

「兄さん…!コイツは本気だ!早く出て」

忠告はジョセ爺の声に消えた。
アヴドゥルが構え、体から何かを出すのが見えた。
兄さんが出したようにー・・・

頭が鳥…体は人間…

「これは…!」

「そう!おまえのいう悪霊をアヴドゥルも持っているアヴドゥルの意思で自在に動く悪霊!」

「悪霊の名はッ!『魔術師の赤(マジシャンズ・レッド)』」

ガパと目を見開き嘴を大きく開け、炎を出すその姿はまるで不死鳥だった。
これがアヴドゥルにつく悪霊。兄さんもこれと同じようなものにとりつかれているのか

その『魔術師の赤』は、兄さんの手足を炎で覆い、ジュージューと体を焦がし始めた。

「兄さん…!ジョセ爺!兄さんを離して!!焼け焦げてしまう!」

その時だ
兄さんにとりつくあの悪霊が姿を現した。
前は手だけだったが今は身体も見える。『魔術師の赤』指を指している。

「おおお…出…出おった
よ…予想以上の承太郎の力!」

ジョセ爺はカッと目を開きその姿を凝視した。
私と母上は汗を垂らし兄さんをただ見守る。







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