星になるための仮眠 | ナノ



「に・・・兄さんッ!」

水面に見えたそれはサメではなかった。
浮き輪までたどり着いた兄さんの下をものすごいスピードで追いかけてくる。明らかに生物じゃない

「承太郎早くッ!早く船まで泳げッ」
「と・・・遠すぎるッ!」

私たちにしかみえないソレは、兄さんを狙っているのが目に見えてわかった。

そんな兄さんのピンチを救ったのは花京院の『法皇の緑』だった。
射程距離範囲が広い花京院のスタンドが兄さんと女の子を引っ張り、九死に一生を得た。
それと同時に海面にいた兄さんを襲ったスタンドが消えた。

「海底の『スタンド』このアヴドゥル・・・・うわさすら聞いたことのない『スタンド』だ」皆が女の子の方を見た。
確かにこの子が現れてからスタンドが現れた。
スタンドは自分の意志でしか動かせないはずだ。兄さんをわざと海に誘い込んだかもしれない。

みんながじいっと女の子を見つめる中、私だけはこの子がスタンド使いじゃないと思った。

なにせDIOのことを聞いても答えがまともじゃない。
しかもナイフ一つで戦いを挑む始末だ。

「この女の子かね。密航者というのは…」

そんなとき
野太い声にでかい図体の船長が女の子を掴んだ。
力加減が容赦ないようで、女の子はすごく痛がっていた。
 
その横で兄さんはタバコを蒸かす。

「船長…お聞きしたいのですが。船員10名の身元は確かなものでしょうな」

確かに船長に聞くのが一番だ。 
だけどさっきからなにかが引っ掛かる気がする。

「ところで!」
「おい!?」

船長が急に兄さんのタバコを取り上げて兄さんに甲板での喫煙はご遠慮願おうだの海に吸い殻を捨てるなだのルールに従え、と言い放ってきた。こいつ…海が好きなのは分かるがタバコを取り上げることはないだろう。ムッと私がイラつきを見せたと同時に、なんと船長はタバコを灰皿ではなく兄さんの帽子のバッジで消したのだ。

船長が操縦席に戻ろうとしたとき

「待ちな。口で言うだけで素直に消すんだよ…大物ぶってカッコつけてんじゃあねぇよ このタコ!」

さすがの兄さんでもキレたらしく、声を荒げた。

「こいつは船長じゃあねえ 今わかった!スタンド使いはこいつだ」

「な なにィーーーッ!!」

兄さんはこの船長がスタンド使いだというのだ。
だけど当の船長はとぼけ面をして頭にクエスチョンマークを浮かべていた。しかもこの船長はSPW財団に紹介された身元が確かな信頼すべき人物だとジョセ爺は言う。

「証拠はあるのかJOJO !?」

「『スタンド』使いに共通する見分けかたを発見した。それは…スタンド使いはタバコの煙を少しでも吸うとだな…鼻の頭に血管が浮き出る」

「えっ!」

思わずみんなが鼻の頭を触って確認する。
ああ、決定的な行動をとったやつがひとりいる…。

「うそだろ承太郎!」

ポルナレフの言葉を聞いた兄さんは自信に満ちた声でこう言う。

「ああ うそだぜ!だが…マヌケは見つかったようだな」  
「あ。船長…」
あーあ…兄さんはやっぱり凄いや。
真顔でなかまを騙すなんて。
どうやらこの方法は船員全員に試すつもりでいたらしい。

船長は帽子を脱ぎ、優しそうだった表情も悪党に変え、急に敵らしい雰囲気を醸し出した。

スタンド使いだとわかった船長にたいして容赦はいらない。兄さんの顔付きが真剣になる。

兄さんが地獄の底で寝ぼけてな!!と船長に宣言をする。
だけど重要なことを忘れていた。女の子の事だ。
足をやつのスタンドに捕まれた女の子は人質に近い状態になってしまった。

「しまったあ!」

「水のトラブル!嘘の裏切り!道の世界への恐怖を暗示する『月』のカード。その名は『暗青の月』」

ああ、居るよな。こういう雑魚。
人質をとって闘うタイプのやつ。しかも負け台詞に近いものを言うやつ…だいたいこーゆータイプは…

「人質なんかとってなめんじゃあねーぞ この空条承太郎がビビり上がると思うなよ」

「なめる…これは予言だよ!」

おいおい…兄さんを挑発しない方がいいぞ。雑魚。

そいつは兄さんに勝てるはずのない挑発をしてきた。
水のなかで勝負しようなんて。

「ついてきな。海水をたらふく飲んで死ぬ勇気があるならな」


兄さんは「スタンド」を出し、やつが海に入る前にヤツをボコボコにした。『星の白金』はやはり強い。
しかも女の子が落ちる前にカタがついた。
「ら…落下するより早くこ…攻撃してくるなんて…そんな」

「海水をたらふく飲むのは……てめーひとりだ」

あーあ。兄さんをナメるからこうなるんだよ。

「アヴドゥル。なにか言ってやれ」
「占い師の私を差し置いて予言するなど」
「10年早いぜ」

アヴドゥルの言葉を借りて言えばその通りだ。
呆気ない敵だったなコイツ。



prev / next

BACK
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -