星になるための仮眠 | ナノ



タイガーバームガーデンでポルナレフとの一戦を終えた私達は海岸に来ていた。
なんでも乗組員と私達だけを乗せる船を一台チャーターしたらしく、それに乗ってDIOのいる場所まで行く、と。

「ムッシュジョースター。ものすごく奇妙な質問をいただきたい」
 
船に乗り込む前、新しくお供をすることになったポルナレフがジョセ爺に質問をしてきた。肉の芽がとれて私達を襲うことはなくなったが詳しい事情というのを聞いてはいなかった。

ポルナレフが質問をしてきたことは本当に奇妙なことだった。

手袋を外さないから『左』腕が『右』腕ではないか、と。

「いったいどういうことかな?」
「妹を殺した男を探している。顔は分からない。だがそいつの腕は両腕とも右腕なのだ」

ポルナレフの言葉に皆が驚いた。もちろん私も。

「五十年前の闘いによる名誉の負傷じゃ」
ジョセ爺の左手は義手なのだ。ポルナレフの言っている男ではない。


ポルナレフの話によれば
三年前、妹さんがその両手とも右腕である男に襲われ、
辱めをうけて殺された、と。ただその男はスタンド能力者である可能性が高い・・・いや明らかにスタンド使いだ。

そしてポルナレフは誓った。
妹の魂の尊厳と安らぎはそいつの死でもって償わなければ取り戻せないと!自身の『スタンド』がしかるべき報いを与える、と!
そこで一年前DIOに出会ったそしてアヴドゥルの時とおなじようにDIOの言葉巧みな口実、話術にのせられて私達を殺してこいと命令された。それが正しいことだと信じた。と・・・だけど話の流れからすると両方共右腕の男はDIOの仲間だろう。


「おれはあんたたちと共にエジプトに行くと決めたぜ。DIOをめざしていけばきっと妹の敵に出会えるッ!」

ポルナレフの真剣な表情から本当のことだとわかる。

「だから君が死んだ妹のように思うぜ・・・襄」
「・・・・ポルナレフ」

そこへ観光客であろう女性が近づいてきてシャッターを押して欲しいと言ってきた。
真剣な話なのに・・・・空気を読んで欲しい。

ポルナレフは追い払うと思えば女性に近づき、ひょうきんに撮影に参加しているではないか。なんなのだアイツ。ちょっと同情したわたしがアホみたいだ。わからない性格だ全く。


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「香港からシンガポールまで丸3日は海上だな。まっ・・・ゆっくりと英気を養おう」

船の上は意外と快適だった。
波の音は綺麗だし、風も気持ちいい。
ジョセ爺に学生服のことをツッ込まれたが兄さんと花京院は涼しい顔をしていた。

「はなせはなしやがれこのボンクラが〜〜ッ」
「なんだ?」

なんだか操縦室が騒がしい。
聞いたことないような声がした。

「おい・・・どうした!?わしらの他には乗客は乗せない約束だぞ」

乗組員の男が何かを掴んで揉めていた。
誰と話しているかと見れば
帽子を被り、ツナギらしき服を着た私たちより年下の男の子だった。
乗組員に尋ねると、この子どうやら密航して下の船倉に隠れていたらしい。

乗組員曰く海上警察に突き出すとかなんとか・・・

「密航?」

話がうまく聞こえなかったが、その子シンガポールにいる父親のところへ会いにいくと。

暫くすると、「ギニャアアッ」という男の悲鳴とともに何かが海に飛び込む音がした。
もしかしてあの子、飛び込んだのか?この海に

「おいおい。飛び込んだの?この海に」
「ほっときな。泳ぎに自信があるから飛び込んだんだろーよ」

「ま・・・まずいっスよ。この辺はサメが集まっている海域なんだ」

乗組員の言葉に驚いた。
慌てて海面を覗き込んだら本当にサメのシルエットが見えた。
しかもさっきの子に近づいている。

「戻るんだ!」

その子は私たちの言葉に気付き、自分にサメが迫っていることに気づいた。
もう駄目だ!誰もがそう思った瞬間

「おらおらおらーッ」

兄さんのスタンド「星の白金」が勢いよくサメを海上にうちあげた。
そしていつの間にか海に入っていた兄さんがその子の胸ぐらを掴み引きずろうとしたが何故か胸元に違和感があったらしく兄さんはその子の帽子を取った。もしや・・・・

「女の子?」

その子は女の子だったのだ。
しかもまだ子供。まるで少女漫画の女の子のようにキラキラした瞳の。

「やれやれだ・・・」

さて上がろうと、泳いでいる兄さんの後ろに何か揺らめいて見えた。



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