星になるための仮眠 | ナノ



続きを聞いた。するとDIOはこう言って来たらしい。

「『君は…普通の人間にはない特別な能力を持っているそうだね?…ひとつ………それを私にみせてくれるとうれしいのだが』
…ヤツの本当に恐ろしいと思ったのはその時だった。ヤツが話しかけてくる言葉はなんと心が……安らぐんだ…危険な甘さがあるんだ。だからこそ恐ろしい!!
わたしは必死に逃げた。闘おうなどと考えはしなかった。全く幸運だった」

やはり、「DIO」という名前を聞くと身震いがする。
汗が止まらなくなる。気分が悪くなる。アヴドゥルが語った話だけでもソイツはヤバイやつだ。ジョセ爺の言う通り、カリスマ性がある。

「わたしは迷路のようなスーク(市場)に詳しかったからDIOの追走から逃れられた……でなければ私もこの少年のように「肉の芽」で仲間に引き込まれていただろう。「スタンド」をヤツのために使わせられていたろう」

「そしてこの少年のように数年で脳を食い尽くされて死んでいたろうな」

「死んでいた?」

兄さんは花京院典明の方を見る。
確かに話を聞く限りだと助かる見込みは少ないかも知れない。忠誠を誓った兵士は簡単には解放されない。脳みそが開放しないのだから…ー

「ちょいと待ちな。この花京院はまだ…死んじゃあいねーぜ!!おれのスタンドで引っこ抜いてやるッ!」

「承太郎ッ!」

だけど、兄さんが目の前にいる花京院典明を…苦しんでいるそいつを見捨てて逃げるなんてするわけないじゃあないか!

スタンドを出し、自らの手で花京院の顔を押さえ、兄さんは集中した。

「じじい!おれに!触るなよ。こいつの脳にキズをつけず引っこ抜くからな…おれのスタンドは一瞬のうちに弾丸をつかむほど正確な動きをする」

「やめろッ!その肉の芽は生きているのだ!!なぜやつの肉の芽の一部が額の外へ出ているのか分からんのか!優れた外科医にも摘出できないわけがそこにある!」

「あ!!」

ビジルッ!
奇妙な音を出しながら花京院の額に着いた肉の芽は触手らしきもの伸ばし、兄さんの手にズブッ!と刺さった。

「肉の芽が触手を出し、刺した!まずい、手を放せ!JOJO」
「摘出しようとする者の脳に侵入しようとするのじゃ!」

「ジョセ爺…大丈夫だ。兄さんは失敗なんかしない」

「ぬうう」

ボゴボゴボゴ、と嫌な音を立てて兄さんの手の皮膚に入り込んでいく肉の芽。痛々しいが、兄さんを信じていたわたしはジョセ爺を諌める。

すると、その衝撃で目を覚ました花京院の目がパチリと開き、兄さんの方を向いた。

「き…さ…ま」

「動くなよ花京院。しくじればテメーの脳はおだぶつだ」

とうとう頬のところまで上がってきた肉の芽は、皮膚を潜り
、あと少しで脳まで達するところだ。でも兄さんは動じない。花京院を救いたいって気持ちが伝わってくる…ー
「手を放せJOJO!顔まで這い上がって来たぞッ!」

アヴドゥルが必死に止めようとするのをジョセ爺は静止した。

「わしの孫はなんて孫だ…体内に侵入されているというのに冷静そのもの……ふるえひとつおこしておらんッスタンドも!機械以上に正確に力強く動いていくッ!」

カッと力を入れ、思いきり強く肉の芽を花京院の額から引き抜いた。思わずアヴドゥルが「やったッ!」と、声を上げる。そして兄さんの体内に侵入しようとしてきた肉の芽を兄さんは自分で引き抜いた。なんて強いんだ。

そして触手をブチブチ引き裂き、あとはジョセ爺が、「波紋疾走」で肉の芽を粉々にして…はい。おしまい。

すばらし連携だ。そしてすばらしい、兄さんの力(パワー)…恐れ入るぜ。

「な?…」

花京院の目が完全に覚めた。解放された、というべきか。

「なぜおまえは自分の命を危機を冒してまで私を助けた…?」

「さあな…そこんとこだが、おれにもようわからん」

兄さんはフイッと背中を見せて花京院から目を反らしたが、きっと、安心してるに決まってる。
助けたかった命が助かったのだからな。
「感謝しろよ。花京院…。兄さんが救ってくれた命なんだから」

花京院の目頭に、煌めく一粒のものが見えた。
嬉し涙なのか…解放されて悲しいのか…
どちらとも言えないが、こいつの肝っ玉には敬意を払うことにした。

俺は花京院の肩をポンと叩き、ハンカチをあげた。
殴ろうなんて思ったこと、忘れよう。







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