空想世界の逃走劇 | ナノ



家に帰る途中、おじいちゃんはこれまでの経験の話をしてくれた。
どうしてヒトデの研究を始めたのか、や母さんが刑務所の中で体験したことへの不安や、ジョースター家の星の痣の話…「杜王町」で出会った勇敢な少年や色々な人の話…特に面白かったのは杜王町かな。勇敢な少年と出会ってからおじいちゃんは強くなった、そう話してくれた。

あと少しで家に着く、そう気が緩んでいたからかもしれない…
まさかあんなことが起きるなんて。

・・・・


家に着く数分前のことだった。
私の家の玄関の前で父さんと母さんの何かのしゃべり声が聞こえた。
ご近所にしては騒がしい。それに聞こえてくる言葉が乱暴な気がした。おかしいなと思い恐る恐る覗いてみると、玄関前に知らない人たちが5、6人集まっていた。それもスーツを着てサングラスで目を隠して、いかにも怪しいような人たちが。セールスにしては人数が多い…おまけにただならぬ空気だ。これは一般人じゃあない。スーツについているロゴマークが目に入った。そこに書いてあったのは『SPW』…どこかで見たり聞いたりしたことのあるような…私は眉毛にしわを寄せ、怪しい人たちと目が合わないようにおじいちゃんの陰に隠れた。嫌な予感しかしなかったからだ。

「SPW財団…足が速いな」
「知ってるの?」

おじいちゃんから少し殺気を感じた私はビクリと身震いをした。
今までにない異様な緊張感。どうしよう。

「少し下がっていろ」
「…!母さんと父さんは…!」

これ以上のことは聞かないほうがいいみたいだ。
おじいちゃんの殺気が増した。隣にスタンドを出して警戒態勢になった。
わたしは声を出さないように必死で我慢した。

「お帰り下さい…僕はこれ以上幸せを失いたくはない」
「SPW財団が何考えてるかわからないけど絶対にジョルジオは守るわ…!」

「ジョルノ・ジョヴァーナ…そして空条徐倫…いや、スタンド使い。我々はこれ以上DIOの血筋を残すわけにはいかないと判断した。よってジョルジオ・ジョヴァーナを捕獲する。渡してもらおう」

私の名前だ。スーツを着た人達から私の名前が出た。
捕獲……?私を…何故?

「仕方ない。強行突破だ」
「……来るならっ!来いッ!!」

母さんがいつもの顔とは別の顔をして、スーツの人に向かい、拳を掲げた。表情は必死で、そしてどこか覚悟を決めたような。そんな気がした。

「愛するものは守ります。あなた達には壊させないッ!」

父さんは一人を倒し、冷静さを保ちながら「スタンド」を出した。その顔は母さんと同じ…覚悟を決めた顔だった。

「くッ!まだだッ!来いッ!」
「……ジョルジオは…守る!ジョースター家の意思にかけて!約束だから…ッ!」

父さんと母さんは必死だった。
だけれど…数が多すぎる…それに何故か本気を出さない。
「SPW財団」の人達を気絶はさせるが殺しはしなかった。
父さんは腕に傷を追い、母さんは背中に傷を追ってしまった。なのに…何で……

わからない。ああ、パニックだ。頭が真っ白になった。だってこんなの映画や小説でしか見たことの無い話だよ。
私を何で狙うの?理由が分からない。「ハァー、ハァー」と息を落ち着かせるが、過呼吸に近くなる。上手く息が肺に入らない。苦しいよ。

「落ち着け…お前には俺がついている。俺を見ろ」
「承太……郎お…じぃ…ちゃ……っ」

涙を流したくなる。だけど泣いたらだめだ。
おじいちゃんの服の裾を握り締め、私は呼吸を整えた。


「シャー!」

嫌な予感がした。
私の視界には、警戒体勢を取るチロが映る。

「ッ!なんだこの猫ッ!退けッ!」
「ギャウッ!」

チロが、蹴飛ばされた。
まだ子猫のチロの体は中に浮き、私の目の前に…嫌な音を立てて落ちた。目に写ってスローモーションに見えたものは現実。チロは、赤い血を流し、ピクリピクリと動く。

「………チロ……?」
三毛猫の模様……まだ小さい体…覚えのある毛並み…

私の頭はブラックアウトした。
そして、何かがキレた。









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