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「包帯を、親族以外の前で解くんじゃないぞ。決して」
「ただいま」
「ただいま帰りました」
母さんと父さんが買い物から帰って来た。
何やら色々紙袋をぶら下げていた。
「ふふ…色々買っちゃった」
「ジョルジオの靴も買いましたよ?気に入ってくれると嬉しいです」
「ありがとう!父さん、母さん!」
「っ!ジョルジオ!手をどうしたの?包帯してるじゃない!」
あ、バレちゃった。
何でもないの、って言いたいけど父さんと母さんは心配しそうだから正直に言った「少し擦りむいた」と。
「ならいいけれど…」
「大丈夫よ…父さん母さん。心配してくれてありがとう」
心配性の母さんは、まだ納得していない表情で私包帯を解き、手首の傷口を見た。おじいちゃんの方を見て目で何かを訴えたが、おじいちゃんは「大丈夫だ」と口を動かしてくれたのでおじいちゃんを信じて母さんにもう一回「大丈夫だよ」と口角を上げて答えた。
「ジョルジオ、傷口を貸して下さい」
「?」
父さんが私の手首に自分の手を当てて、目を瞑った。
改めて自分の父親を近くで見たけれど、やはり美しい。
金色の睫毛は、昔見た絵本に出てきた妖精の髪の毛の先っぽようにキラキラしていて、鼻は高く形が良い。それに線も細くて手足も長い。わが父ながら惚れてしまいそうだ。
「はい、これで大丈夫」
「?何をしたの」
父は少し眉を歪めて「おまじないですよ」と私の手に軽く唇を当てた。
それが何だったのかは後で知ることになる。