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「おじいちゃん、おかえりなさい」
「…ああ」
チロを抱き抱えながら、おじいちゃんに挨拶をした。
おじいちゃんは少し驚いたように私を見つめ直した。
「ジョルジオは、成長が早いな。はじめて会ったときは会釈もしなかったのにな…今は俺に挨拶を出来るようになったな」
そうかな?
…自分では分からないけど…チロのお陰かもしれない。
少しだけ家族の顔をまともに見られるようになったし声も大きくなったかもしれない。
私はなんだか照れ臭くておじいちゃんの顔が見られなかった。だからチロで顔を隠した。すると母さんと父さんが笑ってくれた。
それに答えるようにおじいちゃんは私の頭をポン、と一撫で…花に水をやるように当たり前のように、日課のごとくこう言うんだ。だけど一日に一回しか言わない。だからちゃんと聞こうと思う。
「愛している。ジョルジオ」
すると、愛されているんだ。私は…
そう実感するんだ。
「私も、皆を愛してる」
「ジョルジオは、私の大切な子供…」
「心から愛しています。ジョルジオ」
母さんと父さんが急に抱擁してきてビックリした。
思わずチロを手から離してしまった。
ハグは昨日も一昨日も…毎日しているのだけど、
今日のハグは違う気がした。力強く、微量の悲しさが混ざって…だけど変わらないハグだ。
「離しはしません…」
「父さん?」
父さんの口から出た言葉は、不安が混ざっていた。
それを見ているおじいちゃんは癖の帽子を深くかぶる動作をした。その意味が分かるのは後程のこと。