▼
おじいちゃん気を使ってくれたのか、階段を降りてキッチンへ行き、紅茶を作ってくれた。
「ジョルジオ、飲んで落ち着け。徐倫から紅茶がいいと、言われた…」
「ありがとう、ございます……」
紅茶から香る葉っぱの匂いが私の心を
落ち着かせてくれる。
そのお陰で涙は止まったが、鼻が痛い。
横を見れば充血した自分の瞳が、机の横にある鏡台のに掛けてある灰色の布の隅からちらりと見えた。
酷い顔だ。
こんな顔して私はおじいちゃんに顔を合わせたなんて信じられない。信じたくない。
「…美味しい…」
紅茶は、ちょっぴり苦かったけど鼻に通り抜ける葉の香りが胸の痛さを押さえてくれた。
何よりも承太郎おじいちゃんが私を見る瞳が優しくて、暖かくて…今までの痛みを包んでくれたから涙なんて消えた。
「ねえ、承太郎おじいちゃん…もう一人のおじいちゃん……パパのお父さんってどんな人だったの?」
唐突に向けられた質問に対し、おじいちゃんは星形のバッジが付いた帽子を深く被り、黙り込んだ。
「DIO…か」
ゆっくりと口を開き、発した言葉は4文字だけ。何故か一言だけ喋りまた口を閉じてしまった。
「これからジョルジオに言うことは真実だ。しっかりと聞いておけ」
真剣な眼差しで、でもどこか懐かしい話をするような雰囲気を醸しながら承太郎おじいちゃんは私に話をしてくれた。
「DIO…俺たちにとっては強敵のような男だった…」
俺たち…?
おじいちゃんは一人でDIO…に戦いを挑んだんじゃないの?
おじいちゃんは、スウッと息を吸い込み
「俺は…」と自分のことと、仲間のことを事細かく語りだした。
自分が悪霊に取り憑かれ、自ら監獄に入った最初のこと…
承太郎おじいちゃんの母親のこと…
おじいちゃんのおじいちゃん…曾祖父のこと…
最初の仲間アヴドゥル、に会ったこと…
「スタンド」という存在を知ったこと、使ったこと。
ゆっくりと…でもしっかりとした口調で話をしてくれた。
「カキョウイン…?」
「ああ、とてもチェリーが好きな奴でな。」
同じ年の花京院典明、陽気なフランス人のポルナレフ…
コーヒーガムが好物のイギー…
おじいちゃんは嬉しそうに仲間の話をしてくれた。
気が付けば二時間が過ぎ、日が沈みかけていた。
こんなに人の話を聞いたのは何年振りだろうか…?
私は人の話を聞くのが苦手だったから
人と会話をするのを避けていた。
下手すれば生まれてはじめてかもしれない。