空想世界の逃走劇 | ナノ



「そうか…お前はDIOの孫なんだな…」

「…?」

「ふっ…どうりで反骨するわけだ」

承太郎おじいちゃんは、小さく笑い、私の頭をその大きな手で撫でてくれた。
恐らく経験を重ねてきたであろうその大きな手は、暖かくて…柔らかくて…でも衰えていない。不思議な力を感じた。

いつまでも、触っていて欲しくなる…優しい手。


「そっくりだ…」

「もうひとりの、おじいちゃんに…?」

大きな手は私の頭から離れ、今度は私の頬を撫で始めた。

「ああ、でもな、お前には…ジョルジオには暖かさがある…。アイツとは違う暖かさが。そして優しさもある。家族を思いやる優しさが…」

「…っ違う」


家族を思いやる優しさ?
そんなものがあるなら私は今頃明るくて健康で、父や母に笑顔であいさつをしたり、近所の人とだって
接したり、通学路やいつも通る道を鼻歌混じりに歩いたりするじゃない。

私は逆だ。
父や母にだって微笑んだことないし、健康でもない。近所の人にだって会ったことないし、顔も名前も知らない。通学路だって通らないし、鼻歌なんてしない。
全く逆の性格じゃないか。
なのに…どうして



「違うんだったら徐倫の料理を食べるか?」

「……っ!」

「ジョルノ君と顔を合わせるか?」

「……っそれは……」

言葉が詰まった。
おじいちゃんの言葉が次々と刺さる。
痛い言葉が刺さる。

確かに、私は母の料理を残したことがない。
毎日部屋の前に置いてくれる料理を。

父とは必ず顔を合わす。
疲れていないか、私のことで悩んでいないか
顔色を疑う。



……どうして?
私の思っていることと逆の考えを私にぶつけるの?
胸が苦しいよ。痛いよ…。
これ以上私を締め付けないで。


ぽた、ポタリ・・・・
私の頬を伝う何かが零れ落ちた。

「・・・あ…」

「何故泣く?」

分からない。
分かれば今頃これを流し続けてるよ…
これを見たのは何年かぶりだから。だから・・・

「やはり・・・辛いな、孫の涙は。じじいの気持ちが分かったぜ」

私は
自然にだろうかおじいちゃんの胸に埋まった。
まるで子供が泣きじゃくるように。

分からない。でも・・・
この人私の小さい痛みや大きい痛み
全てを包み込んでくれる気がしたから。

まるで
求めていた人に会えたようだった。


「泣くな・・・辛いだけだ」

「分かっています。でも…」

頬を伝うこれは止まらなかった。
承太郎おじいちゃんの言葉が・・・一語一句優しさに聞こえたから。



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