捧げ物 | ナノ


  ペン先まで愛して


「おい名前」

帰り道の途中、私に馴れ馴れしく話しかけてきたのは異様なバンダナ、そしていつも変わったファッションの漫画家、岸部露伴。

別にファンでもないなんでもないから
私はスルーした、と思ったのだが…何故かあとをつけられているではないか。

正直驚いた。



「おいって行っているだろうが!返事くらいしろ!」


「…なんですか。ストーカーなら警察呼びますよ」


余りにもしつこく付きまとうので仕方なく足を止めて振り向いてやった(仕方なくだ)。


最初から返事をしろ!と言わんばかりに口を「へ」の字にひん曲げて私の目の前に立って腕を組んでいた。

「……君と、頼を戻そうかと思ってね…」

急に真剣な表情で私をじっと見つめて何を言うかと思えば、昔話だ。


…そう。
私と岸部露伴は昔(成り行きで)付き合っていたことがある。

学生の時に岸部露伴に思い切って告白をした事があった。
ぜったいフラれるだろうと覚悟はしていたのだか、答は「いぜ。付き合ってやっても」だったのだ。

私は驚愕してその場に突っ立ってただ、ポカーンとしていたのを思い出した。

「なんだよ…その顔は」

今思い出すとちょっとムカムカする。
ああ、今思い出した。

「…付き合って三日でフッた人は嫌です」

そう。そうなのだ。
告白をして付き合い始めたのは良いが、三日後に「つまらないね」の一言で別れを切り出された。

それ以来学生の間じゅう、岸部露伴という存在がだいっきらいになり、目も合わせなかった。

「…急に連載のハナシを持ってこられたからね、そっちを優先したんだ。悪かったよ」

「言い訳すんな」

私はべーっと露伴に舌を出して嫌味たらしい顔をした。

「君のっ……!」

露伴がなにかを言いかけて止め、
なにやら不満げな顔をしながらため息をついて私の顔をじいっと見詰めてきた。

「なに?」

問い詰めて露伴の唇まで数十センチの場所まで近付いてみた「キスできるならしてみろ」と内心思いながら。

すると露伴はびくともせずにただ腕を組んでいた。
してこないのかい…つまんないな…

私はプイッと後ろを向いた。

「オイ」

露伴に呼ばれて私は不機嫌そうに返事をして振り向く。

すると… 驚いた。
なんとあの岸部露伴が私に頭を下げているではないか!

「君だけは忘れられないんだ…頼む」

「ちょっ…ちょっと!顔上げてよ!こんなとこ見られたらまずいから!分かったわよ!あのときの話しは無しするから!」

私は慌てて露伴の顔を覗きこみさっきの返事に答えた。

しかし露伴の顔には不思議な笑みがこぼれているではないか。

怪しい…


「だったら僕と付き合うかい?」

私がうん。と返事をしようとした瞬間…

「有無を言わさず先手必勝!」

いきなり何か呪文をかけられたように体が動かない。
手足がびくともしない。言葉が出ない。


"岸部露伴のものとなる"
 
何を言っているの!
口を開け、そう言おうとして口から出てきたのは…

『はい』

ロボットのような口調で操られたように私は岸部露伴に笑顔で返事をしたではないか。
何だかおかしい。だけども自分が思っていることが出来ないのだ。

「うん。実に良い…君は素晴らしいな」


その日からだ。
あんなに意識していなかった岸部露伴の行動全てが耀いて見えてしまうようになったのは。





ペン先まで愛して

(いったいどんな呪文をかけたの?)

(秘密さ…)

そうやって今日もまた私を焦らす
















++++++++++


あとがき&お礼


ルーノさんへ
大変遅くなってしまい申し訳ありませんでした!

最後なんか露伴先生がヤンデいるようにしか見えなくて
書いていてだんだん暗くなってしまって…

あれ…露伴先生ってこんな人だっけ?

…すみません



こんなもので良ければもらってやってください!

この度は相互して頂き、本当にありがとうございます!
これからもどうぞよろしくお願いいたします^^








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