蛹のように

何度君に触れたくて…
何度君を抱き締めたくて…何度も試してみた。だけどどれも失敗だ。どうして神は許してくれないんだ。


「露伴ちゃんって…不思議よね」

「幽霊の君に言われたくないね」


「いつも私の手を触ろうとして失敗してるもん」

「ち…違う…!あれは消しゴムを拾いたくてだなッ…!!!」

「どんだけ消しゴム落とすのよ」


「ふふ…照れ屋よね。露伴ちゃんは」

「だから違うと言っているだろうがッ!!」

「良いわよ。キスしても」

彼女が言い放ったのは"キス"という二文字の単語…

何度も望んだ言葉。

「そんな簡単に言うもんじゃないぜ。キスなんて」

「大切な人とキスしちゃ悪いの?」

彼女は僕の頭の上にふわりと浮いて僕の肩に手を回した。触れることは許されず…彼女の温もりを感じることも許されず…ただただ彼女の声だけを聞くことが出来るだけ。

神なんて居ない。

知っている。信じたって願いを叶えてくれるわけでもなく、祈りを捧げたって現実は現実だ。



「僕だって君に触れたいよ」


君が僕に触れられるように僕が君に触れたい。かなわない願い……



ああ、あの時の時間を返してくれ
犠牲になるのは僕だけで十分だったんだ。

彼女の時間を返してくれ。


「はい」

「…!」

触れなくてもわかった。
風のようなキス…。

温かさはない。だけど分かる。彼女の唇の形が……

「いきなり…かよ」

「愛してるわ。露伴ちゃん」


どうせなら実体化した彼女に言われたかった。やはり神なんて居ない。

どうせ小さな願いなのだから受け付けられなかったのだ…。



それでも望んだ

(彼女がいつか僕の世界に来てくれることを幼く夢見ながら)

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