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いつものように荒木荘の前を通ったら、見たことのある独特的な白髪に、目力のある黒人男性、金色の大きな十字架が刺繍してある黒い神父服の人が立っていた…。
ああ、これはあの人だな、ってすぐに分かった。
「プッチ神父〜!」
やっぱりプッチ神父だ。
父さんと、比較的仲が良くて昔凄い間柄だったとか、神様並に父さんを敬愛してたとか、色んな噂がある人。不思議な神父だ。
「ああ、セシルか」
「神父、お買いもの?」
私の呼び声に、快く応じてくれた。
プッチ神父の手には買い物袋のようなものがぶら下がっていて、中身はパンパンに詰まっていてはち切れそうだった。
「ああ、これかい?近所の人妻達から相談を受けて、色々と教えを説いていたら野菜を貰ったんだ」
人妻て…
言い方が何かやらしいな、プッチ神父。
「プッチ神父も、相談受けるんですね」
「なんだい?君も相談したいことがあるのかい?」
プッチ神父がズズイ、と顔を近づけてきた。
気配がいつもしないからびっくりするんだよなあ……焦
「しかし、君は…おとうさん、DIOにそっくりだな…」
「は!?」
何をまじまじ見てくるかと思いきや、いきなり父さんと重ね合わせてきたではないか。
私、父さんとそっくりと、言われるのが一番苦手なのですよ?プッチ神父。
「似てない!」
「ハハハ、これは将来が期待できるな…君は神になれ」
「はあ!?」
なんか、近所のオジサンみたいだな。
あんた本当に神父か?
しかし不思議なもので、神父は私の前で良く笑う。父さんの前でも良く笑うけど…ディオや初流乃の前ではめったに笑わないのだけど。
やっぱりナニ考えてるのかわかんない。
「セシル、この野菜、要るかい?きっとうちでは食べきれないだろうし」
「え?良いの?」
もちろんさ。神父はまた微笑み、私に野菜をお裾分けしてくれた。
「ありがとう、プッチ神父」
「…どういたしまして。美しいセシル」
最後のは余計だと、思うけど…………ま、いっか。
お野菜いっぱい貰えたから今日はポトフにしよう!
私は神父に手を振り、荒木荘を後にした。
神父に変なこと言われたせいで何だか胸に違和感が残ったけど気にしないことにした。