うりぃんぼ。 | ナノ


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「あ、吉良さん」

「おや、セシルじゃないか…やっと私の所に嫁に来る気になったのかい?」


違いますよ。そうやって目で訴えながら私は吉良さんを(蔑んだ目で)見た。
荒木荘にお裾分けをもらいに来る度に毎回毎回お嫁とか…お嫁サンバかっ!!あんたは郷ひ●みか!ジロ●ラモか!イタリア男か!?



「残念ながら私には心に決めた人が居ますから(棒読み)」

「…そうか…それは残念だな」

「そんなことより肉じゃが分けてつかあさい」  

「君には食い意地にはほとほと呆れるよ…誰に似たんだか…」

うるさいやい!
私は吉良さんに向かって小さくべーっと舌を出した。
好きで似たくなかったよ。だけど仕方ないじゃん。
私の腹の虫はもうハラヘリMaxなんですよ?吉良さん

「まあいいさ…待ってなさい。肉じゃがを分けてやるから」

「わーい!ありがとう吉良さん!愛してる!」

その言葉にピクリと吉良さんが反応したような気がしたが、見間違いだったようだ。
吉良さんはスタスタと台所らしき場所に向かっていった

エプロン姿の吉良さんに「主夫してるなあ」と私は感心した。


「ほら」

「うわあ!美味しそう…!」

「セシル、ヨダレが垂れているぞ…」



ヨダレを拭きなさい。と吉良さんに注意されて私は慌て手の甲でヨダレを拭き取った。
仕方ないじゃん!ハラヘリMaxだったし
タッパに入れられた肉じゃがが黄金に輝いて見えたんだから!

「じゃあ早速、頂いて……」 
「お礼がまだじゃないかい?」

は?思わず呆れた声が出てしまった。
お礼?いつもは言われないのに。

「ありがとう…ございます」
「違うね」


そう言うと吉良さんは私の手の甲に顔をスリスリと刷り寄せてきた。
それが吉良さんの頬の感触がなんとも気持ち悪くて思わずさぶいぼが出来てしまった。


「ちょっ…!吉良さん!…って何舐めてるんですかっッ!!」

フフフと不気味に笑う吉良さんは今度は指先をペロリと舐めて、しかもちょっとくわえてきたではないか!
不味いぞさぶいぼが全身に………!

「…っやめて下さ……」

昼間っからセクハラか!
このスケコマシ!!
助けを求めようにも近くに誰も居ないし荒木荘軍団は出かけてる…!うわっ どんどん上にあがってくる…ヤバイ!誰か…!


心の中で助けを求めると何処からともなく「ゴゴゴコ」の効果音が聞こえてきた。
それは空耳ではなかった。

「貴様…私のセシルに何をしている?」

「…父さん!?」

父さん…だった。


父さんの目はギラリと鋭い目付きになり、後ろにはザ・ワールドが堂々と現れていた。
始めて見る父さんの姿に私は唖然として、開いた口が塞がらなかった。

「…来てしまったか…仕方ないね。続きはまたにしよう」

「……父さん……」
「さあ、セシル、こっちへ来るんだ」

吉良さんは焦りもせず私の手をパッと放して荒木荘の扉を開けて去ってしまった。

「…大丈夫か?」
「……うん……」

父さんの迫力は凄いのだな…私は改めて思った。  

良いと言ったのだが、父さんは私を無理矢理おんぶして帰ってくれた。
久しぶりの父さんの背中に、少しだけ…優しい温かさを感じた帰り道…
貰った肉じゃがはすっかり冷めてしまった…








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