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「初流乃、さ…。今日一緒に帰ってくれない?」
「セシル?…良いですよ」
初流乃とは毎日じゃないけど、一緒に下校している。
理由はただなんとなく
「一緒に帰りたいから」。
家に帰るとまずパードレが玄関で(余計な)お出迎え。しかも部屋まで着いてくる。
初流乃と一緒に帰るとパードレの態度が一変するの。
パードレの弱点は初流乃だから、一緒に帰るとパードレがおとなしくなる。
「…ふふ、懐かしいですねこの坂」
「え?何が?」
私は鞄をブンブンと回しながらジョルノの話を横で聞いていた。
「セシルは覚えていないかも知れませんが…昔パードレが保育園まで迎えに来てくれたんですよ…そしてこの坂でセシルを肩車してくれたんですよ」
「……そんなこと…あったっけ?」
思い出した。
確かあれは保育園の運動会の帰り道。
ジョルノはかけっこで一等賞を取ったけど…私は転んで最下位。
泣き崩れて帰ろうとした時に…パードレが迎えに来てくれたんだ。
そして右側でジョルノの手を握り、肩に私を乗せて、肩車してくれたんだっけな。
泣き崩れた私を…パードレはそっと目隠しして…こう言ったよね。
"DIOの子は皆、素晴らしい…もちろんセシルもだ。だから泣くんじゃあない"
パードレに言われた時、私はまた泣き崩れたんだよね。
…ちゃんと…覚えているよ。
…ジョルノってたまにムードメーカーだなって思う。 今日だって私に思い出させてくれたし。
だって何かしら家族の支えだし。
無くてはならない存在だよ。
たとえ私と血が繋がっていない双子であっても…私はジョルノが大好き。
「さあ、帰りましょう。我が家へ」
「うん」
私とジョルノは長い坂を下り、赤い夕日を背に、暖かい我が家へと足を進めた。