私はいつものようにメイド服に着替えて自分の担当のお部屋のお掃除に行きました。 すると廊下でメイド長さんが私を呼び止めて「大統領のお部屋を変わりに掃除して欲しい」と言ってきました。私はトイレ掃除かと思い二つ返事で請け負いました。 まさかお部屋全体なんて思わずに 。 大統領のお部屋に入ってみるたのはいいのですが…とにかく広いんです。 白い壁に大きな窓… 高級そうなシルク生地のカーテンに大きなテーブル。そしてワインの棚……。 イメージしていたのとは遥かに違い、とにかく広かったんです。 今までの生活…いや生まれて初めてこんな大きなお部屋を見ました。驚きました。 さすがは一国の大統領。規模が違います。 しばらく見入ってしまいました。 「うわー…!広いッ!メイド長さん酷い!こんな広いお部屋なんて無理ですよー!もー!」 仕方なく天井から掃除をやり始めたのは良いんですが…とにかく広い!広くてびっくり!! 天井、床、電球、机…と順々に丁寧に綺麗にしていきました。 ワイン棚のワインやガラス製の装飾品を割らないように、と慎重に掃除をして、やっとの思いで掃除を終わらせました。疲れました…。 しかしやはり大きなお部屋を動き回り…隅々まで綺麗にしたので疲れと眠気がピークに……「ふわぁ」と大きなアクビを一つして首をゆらゆらし始め、うとうとしてしまい、少しだけ休もうと近くにあった大統領のベッドで眠ってしまいました。 「少しだけ少しだけ…失礼しまーす……」 とてもふかふかで…気持ち良くて…暖かくて… 少しだけ、のつもりがあまりの心地良さに寝入ってしまったのです。 そして夢の中へ入ってしまいました。 「…この女は…たしかメイドに居たな」 男性の声がしてはっと目を覚ますとそこに居たのはなんと大統領でした。 「ひ…ひゃああああっ!!ヴァレンタイン大統領っ!!!ももも申し訳ありません!!もちろんお掃除はきちんとしていました!!少しだけ、少しだけとうたた寝をしたのはごめんなさい!!本当に…」 慌ててベッドから飛び起き、大統領に何度も頭を下げました。まさかご本人が来るなんて思ってもいなかったのだから。 「落ち着きたまえ…別に怒っては居ない」 「……っ」 「しかし、奥の部屋へは行っていないな?」 「…は…はい!もちろんでございます!」 大統領は落ち着いた雰囲気で私を見てきた。てっきり怒られると思ったのですが…。 そういえば今日の大統領はなんだか違う雰囲気で…それに少しだけスリムになったような気がしたのは私だけでしょうか。 「ヴァレンタイン大統領…?」 「…気にしないでくれ。それと、"大統領"は要らない。"ヴァレンタイン様"でいい…それと、そのままの格好で居ろ」 「へ?ヴァレンタイン様…ですか」 「君の名前を教えてほしい…」 「…マリア・ペンドルトン…」 私は大統領に応じるがまま自分の名前を名乗りました。 私の名前を聞くとヴァレンタイン様は私の顎をくいっと上にあげてじいっと私の顔を見ました。 「…マリア、か。可愛いな」 「な!?」 "可愛い"なんて言われたことも聞いたこともない台詞を言われた私は耳まで真っ赤になりました。 「う…ヴァレンタイン様!?」 「お前は可愛い…幼さがありながら何処か美しい…」 そう言うといきなりヴァレンタイン様は私の頬にキスをひとつ落としました。私はモップを持ったまま硬直して目を丸くしました。 だって下っぱメイドの私にヴァレンタイン様が頬にキ…キキキキスを……! 私キスなんてされたことないし男性と触れあったこともないものですから…わたわた、も出来ずただ唖然と硬直して立っていました。 「しるしはつけた…。また会おうではないかマリア…」 「は…い。失礼…します……」 私はただぽーっとしながら曖昧なお返事を返して大統領のお部屋を後にしました。 (ところでなんで大統領はスリムだったのでしょう…?まあいいか!) 私は1日中大統領にキスをされた事を考えながら1日の仕事を終えて自分の部屋に戻りました。 今日のことはぜ〜ったい忘れられません! |