ふわっと浮遊感のようなものがおこって、深い、深い闇のそこから引っ張り上げられる。肌をぬくぬくとした体温が包んでいて、とても気持ちがいいのに、起こそうとする何かはとても邪魔だ。


「まだ、眠い」


「いつまで眠る気ですかー?あと1時間で起きなかったらボスがカッ消せっていってましたよー」


なんで、こんな間延びした声なんだろう?というか、今話していたのは誰だっけ?まあ、誰でも良い。誰でもいいから、眠らせて。あと1時間でおきないとボスにカッ消されるみたいだけど、それでも…。それでも…。


え?


あと1時間で起きないと、ボスにカッ消される?カッ消すってなんだっけ?あの、ボスの手からでるコオォォォってやつだよね?あれ、をされるってことだよね?あれ、カッコいいんだよねー…。誰がカッ消されるんだろう?その場面見たいなー。そいつ何やらかしたんだろう……。


「って、あたしかあっ!?」


がばりと起き上がった体は、瞬時に激痛を訴えて、再びベッドへと逆戻り。


体をかけまわる激痛は、あたしの中に住まう悪魔で、内側から骨をえぐっているかのようだ。それできっと高笑いしているんだ。なんて、涙目になりながら考えた。


「やっと起きましたか―。チッ。カッ消されるところ見たかったのに」


おーい。舌打ち以降の言葉もしっかりと聞こえているんですけど―?かなり酷くない?いや、確かにあたしも見たいなっておもったけど、それがあたし自身なら見る間もなく灰になっちゃうじゃん!


って、さっきからそこにいるのって誰だ?そう思って、顔をゆっくりとあげれば、緑の髪に、端正な顔立ち。そこにいるのは、カエルをかぶっていないフランだった。最初にであったのはカエルをかぶってないフランだったはずなのに、カエルがかなり印象的だったせいで、カエルをかぶっていないフランはなんだか違和感を覚える。


「…カエル、ない…」

「…あんなのずっとかぶってられるわけないだろ」

「…だよねー」


半目で睨まれてしまったので気まずさから視線をそらす。だって、カエルあってのフランだよ?フランにはカエルが必要なんだよ!って心の中で必死に弁解していると、頭を叩かれた。


「いたっ」

「…自業自得ですー」

「あ、そういえば」

「ころころ話し変わりますよねー、名前って」

「助けてくれてありがとう」


呆れているフランをそのままにお礼を言えば、てんてんてんと固まってしまった。なんかへんなこといったっけ?と考えていると、ハア、と盛大な溜息をつかれる。


「友達、らしいですしー?というか、ミーこれでも幹部なんですけどねー?」

「だって、友達になったほうが速かったし」

「ミーは名前にあう前から幹部でしたよ。ま、いいですけどねー」

「いやじゃないでしょ?」


ニヤリと笑って聞いてみれば、フランは何も答えることはなかった。これだからポーカーフェイスの奴は!澄ました顔しやがって!


「……はやく退院できないと、書類地獄見ることになりますよ?」

「それはいやだなー」


あたしのデスクの上に積み上げられたタワーのような書類の山を思い浮かべて冷や汗を浮かべた。


「あ、今度買い物行こう!スクアーロ隊長が奢ってくれるって!」

「いつそんな約束取りつけたんですかー?」

「あたしが勝手に決めた!」

「……まあ、奢ってもらえるんならいいですけどねー」


そういったフランは結構楽しそうだった。っていってもポーカーフェイスだから、あのやる気のなさそうな顔なんだけど、あたしは友達だから分かるの!ってことにしておく。







ミーのとなりで君が、
(笑って買い物に行って、馬鹿をして)
(そうやって過ごしていく日常は)
(まあ、悪くはないんじゃないかなー…とは思う)

(ってことはないんですけどねー)
(何が?)
(恩返し、何してもらおうかな―と)
(え、はたでも織らなきゃいけない?)
(なんではたなんですかー?)
(鶴の恩返し的な?というか、この会話、前ベル隊長ともやった)
(……あの堕王子と一緒にされるなんて不愉快ですねー…)
(いたたたたっ!フラン!傷口えぐってる!)

fin.







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