新隊員が全員呼ばれ、別室にて待機。かなり大勢いたはずの隊員はなぜか十人に減っていた。っていっても、どれもむさいおっさんばかり。正直、ヴァリアーなんかやめて、もっとかっこいい人がいるところに転職しようかと思ってしまう。


「で、いつまで待たされるんだろうな俺達」

「なんでも、幹部に会わせてもらえるらしいぜ?」

「おいおい。それって最初の試練って奴じゃないか?先輩から聞いたんだがな、なんでもここで幹部に嫌われたら即殺されるらしいぜ」


おー怖っ、と言って身震いして見せるおっさん3人組み。正直、おっさんが3人で突き合わせた顔を青くしている場面なんて見ていて何も面白くない。そういえばここにフランがいない。同じ年ぐらいだったから同じように新隊員だと思ったんだけど。


「もしかして、これで幹部だったら…」


頭の中でフランが幹部として戦っている場面を想像する。あれだけいかにもやる気のなさそうな声と顔。まず、前線に出た時点で背中にナイフとか刺さって死んでそう。そこまで考えたらなんだか笑えて来てしまった。だって、フランが幹部だなんてガラじゃないし!と、そこまで失礼なことを考えたとき、一人の隊員らしき人についてこいと言われお隣の部屋へと移動させられた。


そこは、なんというかまあ暗殺部隊にはお似合いの薄暗さ、薄気味悪さで、会議用の机には6人の人が座っている。全員の目がこっちを向いていた。殺気さえも漂っているこの部屋に緊張感が走る。と、そこで気づいたのは、一番向こうに偉そうに座っている男の人は寝ているのか目をつむっているということ。会議中に寝るなんて、なんて自由な人なんだろう。いや、人のことを言えない自信はある!


「ししし、こいつらがこの一週間で生き残った新隊員な訳?」

「う゛おおおぉい!!お前が遊びすぎるから五十人いたのが十人に減っちまったんだろうがあ!」

「そうよん。ベルちゃん。新人をいじめるなんてだめじゃない!んもう」


きらりと頭に何か光に反射するものをのせている人と、長髪のかなりうるさい男の人。そして明らかに声は男と思われるのに女口調でしゃべっているしゃべる人が会話をしている。この人たちが幹部?一発芸大会とかそっち系に出ている人たちじゃ無くて?


「うるさいですねー。ロン毛隊長の声は」

「う゛おおぉい!新米ペーペーがふざけたこといってんじゃねえぞ!」

「あーあーったく。うざ」

「ああっ!?なんだと!3枚に降ろすぞ!」


なんだか、保育園の学芸会を見ているみたいだ。劇をやっているうちの一人が失敗しちゃって、それがむかついた準主役の子が失敗した脇役に劇の最中でキレちゃうみたいな?あれって、先生もおろおろだし、挙句の果てには親も出てきての大げんかになりかねないから見てて面白いよね。うん。


一人、その幹部の人たちのおもしろ劇場を見ていろいろと考えていると、一番奥に座っている人が目を開けたのが分かった。薄暗い中でもわかる赤い瞳。隣に並んでいたおっさんたちが息をのむのがわかった。


「…かっけー」


呟いた言葉は誰にも聞かれることはなかった。だって、あの人が手に炎をともしたと思ったらうるせえの一言で部屋の壁をふっ飛ばしたから。長髪の男性を巻き込んで。あ、幹部が一人死んだ。って思っていたら瓦礫の中から起き上がる長髪の人。なんてしぶといんだ。それはもうゴキブリ並にしぶといよ。壁が壊されたことによって日の光が部屋の中に差し込んだ。そこではじめてまともに幹部の人たちの姿を見ることができた。


さっき炎を出した人は、言わずともしれた、言わずともしれているから、説明は言いや。
その後ろに突っ立っているのはたらこ唇に、背中に傘をさした………げ、アレってストーカーの変態じゃん!幹部だったの!?いや、きっとあいつはボスの魅力に魅了されてボスをストーカーしてるんだ!
そして、さっきからキラキラと光って眩しいものを頭にのせているのは、あたしより年上かなっておもう男の子。
その隣には、奇抜な格好をしたかなり良い体格をしているお兄さん。
そして、瓦礫からでてきたのはロン毛にでかい声の人。確かあの人はあたしの隊の隊長だった気が…。
そして、最後の一人。その人は椅子に座ったまま、うわー、ゴキブリかよと呟いている。緑の…、緑の…、カエル?


「カエルがいる」

「ん?あっれー、名前がいる…」


かなりどうでもよさげに呟かれた言葉。その声はついさっき会ったばかりの人の声で、しかも、こっちに振り向いた顔は、かなり大きなカエル。ではなく、そのカエルの口に当たるような部分から顔を出しているフランだった。


「………アハハハハッハッ!!フラン、何かぶってんの!?笑える!」


あたしは、それをフランだと認識した瞬間、はらわたがよじれるかと思うほど笑った。それはもう、え、場違いってなに?それ食べれるの?ってぐらいの勢いで、空気もなにも読む気もなく気が済むまで笑った。あー、笑いすぎてお腹痛い。


「…うっわー。何こいつ。殺して―」

「ししし、あいつ誰?」

「確か、スクアーロの隊じゃなかったかしらん?」

「はー、笑った。笑った。で、フランがこんなところで何やってんの?つーか、そのカエル、ファッション?ファッション?プククッ!いや、別にフランがどんな趣味だろうといいんだけどね?クククッ…」


笑いの余韻が残ったまましゃべるからあたしの言葉の端々には笑い声が抑えられない。だって、直視できないって!あんなんで間近に迫られたらはらわたよじれる自身がある!フランはガタッと音をたてて立ち上がるとあたしの前までやってきた。間近に迫ったカエルは予想以上に大きい。


「…フラン。首でも鍛えたいの?」

「…何言ってるんですかー?」

「だって、すっごい重そう」

「これは堕王子に無理矢理つけられてるだけですー。だいたい、ミーがこんな悪趣味なものつけるわけないじゃないですかー」

「悪趣味って…、いい趣味してるって」

「さっき散々馬鹿笑いした奴の台詞じゃないですー」


半目になったフランに言われて、本当なんだけどなーと答えておく。だって、あたしもかぶってみたい。今度かぶらせてもらおう。


「つか、なんでフランがこんなとこにいるの?」

「そんなの決まってるじゃないですかー」

「え?やっぱフランも新入隊員だったの?」

「………言ってなかったですけど―、ミーは」

「なあ、こいつお前の女?」

「は?」

「うわっ!生王子っ!?」


きらりと光っていたのはどうやらティアラだったらしく、金髪にティアラと言えばやっぱり王子。でも、残念なことにその前髪は長く根暗王子のようだ。


「ちぇ、根暗王子ならいいや。どうせなら跳ね馬みたいな人が王子ならいいのに」

「…こいつムカツク。殺していい?」

「いやですよー。カッコいいですって」


語尾にカッコ笑いがつくような勢いで言ったら白い目で見られた。手にはナイフをちらつかせている。


「堕王子がミーの話し遮ってんじゃねえよ」

「だって俺王子だし」


そう言って、根暗王子が投げたナイフは見事フランの背中に刺さった。ダーツなら100点だ!すっげー。さすが幹部。


「いたたたた、ロン毛隊長、堕王子殺していいですかー?」

「というか、フランって新隊員なんじゃないの?」

「ししし、こいつまだこんなこと言ってるよ」

「何言ってるんですかー。ミーは幹部ですよ」

「新米だけどな」

「余計なことはいわなくていいんですよー」










ひどく曖昧に、
(フランが…、幹部?)
(そうですよー)
(はあああっ!?冗談でしょ?)
(あらん、冗談じゃないわよ?フランちゃんはちゃんとしたか・ん・ぶ・よ)
(早死にしてそう!っていういか、ナイフ刺さって死なないの?)
(今さらかよ)

(う゛お゛おぉい!うるせえぞ!てめえら!)
(((お前がうるせーよ)))
(なっ!ベルやフランはいつものことだが、なんでテメエにまで言われなきゃいけねえんだあ!)
(男女差別反対ですよ!隊長!)
(よおし、覚悟しやがれ!)








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