短編 | ナノ


▼ 荒神ロウガ(1/1)

相棒学園中等部二学年ランキング第一位、荒神ロウガ。
学園内でその名前を知らない者は相当なもぐりらしい。
が、私の場合、二学年に上がって隣の席が荒神くんになるまで知らなかったため、完全にもぐりだった。その上に彼に対する私の第一印象は、およそ最悪と言える。
同じデンジャーワールドデッキの使い手として唐突にファイトを申し込まれ、ボコボコにされた時には新手のカツアゲかと思ったくらいだ。
ただ、それをきっかけに話すようになったし、今ではそれなりに仲良くなった……と思いたい。
しかし、荒神くんと関わり始めてからバディファイトが強くなったかと言うと答えは否。
今日も今日とて授業で惨敗を味わい、私は机の上に突っ伏していた。

「いい加減模擬戦でくらい勝ち越したらどうなんだ、東雲ユウリ」
「申し訳ねェ限りです……」

頭上から投げられた呆れを含んだ言葉に、反論は出来ず、ただ謝るしかない。
何せ、バディファイトの授業で十戦中、二勝という結果である。女子には憐憫の目で見られ、男子には何度なじられたことか。
しかし、負け続けて悦ぶほど私はドエムではない。私が悦ぶのは荒神くんになじられた時くらいだ。
そう思った直後、頭に衝撃が走った。反射的に顔を上げざるを得ない。

「今何で殴ったの、荒神くん!?」
「寒気がしたからだ」
「ぐう」

まだ数ヶ月しか関わっていないというのに完全に私の扱いをマスターしている。冗談のつもりの心の声まで読み取るとは……荒神ロウガ、恐るべし!

「貴様はもう少しデッキのバランスを考えろ」
「えー、だってサイズ3で相手ボコボコにしたいじゃん?」
「……その闘争心は褒めてやるが、せめてもう少し戦略を」
「荒神くんに褒められた!? ひゃっほう!」
「……」
「あ、うん、ごめん。謝るから無言で拳を構えるのやめよう?」

流石にまた頭を殴られたらただでさえ少ない脳細胞が一気に減ってしまう。
しかし、まあ、戦略か。
確かに私はあと先何も考えず、相手にダメージ与えようとしていることは否めない。

「やっぱり他のワールドが良いかな、荒神くん」
「デンジャーワールドを極めろ」
「マジですかい」

師匠(仮)による容赦のない一言に、がくりと肩を落とす。しかし、あの荒神くんに発破を掛けられたからには、やらないわけにはいかないだろう。
顔を上げ、机の中から今日のファイト内容を書いた紙を出し、机の横に掛けていたカバンの中からカードを収納している箱を取り出す。デッキに加えているカードとデッキに加えていないデンジャーワールドのカードを眺めた。
考えろ。
私はどう戦いたい。
私はどう戦えば良い。
バランスと戦術。

「……よし、荒神くん! ファイトしよう!」

びしっと出来上がったデッキを手に持ち、荒神くんに向かって突きつける。
が、荒神くんはそこに居なかった。というか、教室から廊下へ出ようとしていた。

「俺はこれから生徒会室に用があるから一人でやれ」
「ジーザス!!」

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