短編 | ナノ


▼ シルエット・ダミアン@(1/1)

「ユウリ」

ジリジリと焼けるような暑さの頃だった。
初めは突然声がしたと驚いたが、それは私の影から発せられたものだと気付いた。
閑静な住宅地のど真ん中。公園で遊ぶ子どもの声は遠い。
誰も居ないか辺りを確認したあと、その場にしゃがみ込んで声を潜めた。

「あの、誰?」
「ふふふ、聞いて驚け。我輩は訳あって貴様の影に棲まう者だ。何せこの土地は暑い。その上、我輩は厚着だからな!」
「……うーん」

訊いてもいないのに厚着だから私の影に居ると言われても。
どうも私の影に勝手に住んでいるという輩は少々お茶目らしい。

「それは違う」
「何が?」
「貴族である我輩はちゃんと貴様の許可を得て貴様の影に住んでいるぞ」
「なんと」
「ああ。何せ先日貴様が夢見心地のところを狙って許可を得たのだからな!」
「タチが悪いな、この貴族」

そういえば先日夢の中で住んで良いかどうかを問われた気がする。なるほど、あれか。
しかし何故私の影なのだろうと首をひねっていると、その様子を伺っていたらしく影は答えた。

「我輩は貴様のバディになるべくここに来た。貴様、シャドウシェイドのデッキを組んでいるのだろう?」
「うーん、確かにシルエット・ダミアンの言う通り、シャドウシェイドのデッキ組んでるけど」
「…………何故我輩がシルエット・ダミアンだと分かった!?」
「いや、あなたのカードのフレイバーテキスト『我輩』だったし」
「それだけで我輩を誰か言い当てるとは……我輩が見込んだだけのことはある。よし、ユウリ。今日から我輩をデッキに加えるが良い」
「ええ……普通にやだよ……」
「我輩の誘いを断るだと!? 貴様、バディが欲しくはないのか!?」
「いや、欲しいけど……でも仮のバディはシルエット・テリーって決めてるし……」
「貴様、まだあんなやつを仮のバディに据えているのか!」
「だって強いしカッコいいし」
「我輩とて強いしカッコいいわ! おのれ、こうなったら貴様が我輩をバディにするというまでつきまとってやるからな!」
「ええ……」
「ふははは! 覚悟しておけ!」

住宅街のど真ん中、高笑いがこだまする。
厄介な隣人が現れたものだと私は深く溜め息を吐いた。今度シュラくんにバディモンスターの追い払い方を教えてもらおう。

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