皆の先輩シリーズ | ナノ


▼ 黒岳テツヤB(1/3)

「あ、おかえり、テツヤ」

俺が帰宅すると真っ先にリビングから顔を覗かせたのはカガリ姉ちゃんだった。しかも珍しく制服姿ではなく部屋着姿で、その背にはすやすやと寝息を立てている妹がいた。
多分、散々姉ちゃんと一緒に遊んだあとなのだろう。器用にもお気に入りのぬいぐるみを抱えながら姉ちゃんの首に手を回していた。

「……姉ちゃん!?」
「はいはーい、愛しの弟と愛しの妹のカガリお姉ちゃんですよー。臥炎カップ、お疲れ様」
「え、姉ちゃん、俺が臥炎カップに出てたこと知ってたんだ。ありがとう……じゃなくて! なんで家にいるんだYO!?」
「なんでって普通に帰省だよ? それ以外になにかある?」
「いや、ないけど……ええー……」

けろり、と言ってのけた姉ちゃんに、俺は玄関で脱力せざるを得ない。
臥炎カップが終わり、臥炎キョウヤと牙王との対決も終わった。
しかし、俺は未だもやもやとした気持ちを抱えたままだった。
結局のところ俺はあの子の、朽縄てる美の本当の名前を聞けなかったのだから。
そんなタイミングで予告もなしに姉ちゃんが家に帰ってきたのには、なにかしらの意図を感じる。
……そう思って素直に訊いてもはぐらかされるんだろうなあ。姉ちゃん、昔からはぐらかすの上手いし。
と、昔という言葉で思い出した。

「姉ちゃん、さ」
「うん? どうかした?」
「その、昔の約束って覚えてる?」
「……約束?」
「ほら、俺が姉ちゃんより強くなるっていうやつだYO」

随分、昔の約束だったと思う。
俺がまだアスモダイと出会う前の七夕の日。世界一のダンサーになるという夢と一緒にもう一つ、姉ちゃんのようなバディファイターになると短冊に書いたことがあった。
数日後にそのことを姉ちゃんと話した際に、俺はある約束をした。
それを今さら思い出したということもあって恐る恐る様子を伺うと、姉ちゃんは俺と同じように気まずそうな表情を浮かべた。

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