▼ 大公爵アスタロトA(5/5)
「まるで告白みたいなことを言うんだね、君」
「こっ……!?」
「何もそんなに固まらなくても。冗談だよ」
「そ、そうか……」
「君とバディになることは構わない。……ただ、いつか君は私とバディになったことを後悔するかもしれないよ」
それでも良いの、と少女は初めて真剣な表情を浮かべ、アスタロトに問い掛けた。
じ、とアスタロトの目を見つめる少女は何かを訴えているようだったが、それ以上の言葉を口にせず、アスタロトの回答を待っている。
アスタロトは少女の意図を汲み取ることが出来なかったが、近い未来に少女と共に、少女の弟と魔王アスモダイと戦うことが出来るのならば――きっと後悔はない。
「俺は……いや、『私』は『君』について行く」
「……そっか」
少女は一度目を伏せたあと、アスタロトに微笑みかけた。
「なら、改めて自己紹介をしよう。私は黒岳カガリ。これからよろしくね、大公爵アスタロト」
「私の方こそ、世話になるよ、カガリ」
かくして黒岳家の長女と悪魔の大公爵は、雪が降り続く夜の公園でバディとなった。
これからおよそ四年後に彼女は『愚か者』『暴君』として名を馳せ、共に『何でも知ってる皆の先輩』を自称し始めるのだった。
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