皆の先輩シリーズ | ナノ


▼ 禍津ジン、真間雁メグミ(4/4)

「どうやら真間雁ちゃんは私のことを相当疑っているようだからここで一つ断っておくけれど、私は別に君たちを敵視したから調べたわけではないよ」
「じゃあ、何故私たちのことを?」
「何故も何も……禍津くんのバディ、包蔵禍心闇狐くんが私の周辺をこそこそ嗅ぎ回ってたらしくてね、敵の刺客かと思った私のアスタロトがふん縛って洗いざらい吐かせたらしい」

非常に重い沈黙が降りた。
横で睨んでいるメグミを、直視出来ない。

「……ジン」
「……すまん」

流石に謝罪を口にせざるを得なかった。
散々思考を巡らせたというのに、落ちがこれか。全く笑えない状況だ。
そして最近闇狐の姿が見えなかったのは、どうやらそういうことだったらしい。
闇狐、すまん。

「大方、轟鬼くんの探し人がどんな人間か知りたかったから、というのが理由かな?」
「……すんませんでした」
「いや、なに、可愛い後輩のお茶目くらい構わないさ。私の方こそ、アスタロトの非礼を詫びさせてほしい。すまなかった」
「いや、俺は」
「私もアスタロトも最近気が立っててね、どうにも警戒心が強くなっているんだ。本当に申し訳ない。轟鬼くんの件は……そうだね。私の気が向いたらということを伝えておいてほしい。それじゃあ、失礼するよ」

そう言って立ち上がったカガリ先輩はテーブルの隅に置かれた伝票を手に取ったあと、アスタロトと共に会計を済ませて店を去っていった。
あとには必然的に俺とメグミが残される。

「……ジンが、可愛い後輩」
「……メグミ、何が言いたいんや」
「別に。ただ、ジンが可愛い後輩と呼ばれる日が来るとは思ってなかっただけ」
「嫌みか」
「嫌みよ」

あっさり言ってのけたメグミに、思わず脱力した。
――結局、依頼は達成出来ずじまいだ。
しかし、今回分かったことがある。
黒岳カガリという先輩は、敵に回すと確実に厄介な人だ。
相当な覚悟がないと彼女の敵にはなれないし、そもそも敵になる前に叩き潰されるかもしれない。
伝票があった場所にさりげなく置いていったらしい俺の闇狐のカードを見つめ、乾いた笑みを漏らした。

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