皆の先輩シリーズ | ナノ


▼ 禍津ジン、真間雁メグミ(2/4)

「あの元気くんことはよく覚えているけれど、どうかしたのかな?」

ーーあの厳格な轟鬼ゲンマが、元気くん?
思わず笑い出しそうになったところを堪えるが、少し吹き出してしまった。慌てて視線を明後日の方向に向けて誤魔化そうとした瞬間、隣に居たメグミに勢いよく足を踏まれた。
相変わらず、俺にだけ容赦がない。
痛みで頬が引きつっている気がしたが、何とか耐える。

「とっ、……轟鬼先輩が、貴女に会いたい、そうです」
「……轟鬼くんが?」
「何か覚えはありますか?」

――今の俺は、あの人に合わせる顔がない。だが、あの人に会わなければならない。
清風会応援団長、轟鬼ゲンマにそう言わしめるほどの人物とは、どんな人物か。
そんな興味本位で受けた依頼だったのだがーー実際に会ってみると普通としか言いようがない。

「普通で悪かったね」
「えっ!?」

まるで心を読んだかのような一言を掛けられ、素っ頓狂な声を上げると、隣のメグミが俺を睨む気配がした。
しかし、彼女は俺たちのやり取りを気にする様子もなく、話を続ける。

「禍津くんの私に対する見解はさておき。轟鬼くん、もとい清風会関連ともなると全く覚えがないと言えば勿論嘘になる。二年前に彼を含めた清風会とは仲違いしたまま卒業したわけだしね。しかし、私としてはまだ仲違いの状態で良いと思っているよ」
「……本当に、良いんですか?」

メグミがやや戸惑ったような口調で探し人に問い掛ける。だが、探し人は相変わらず飄々としていた。

「勿論、相棒学園中等部元生徒会長黒岳カガリとしての見解だ」

黒岳カガリ元生徒会長は、人の良さそうな笑顔を浮かべた。
相棒学園中等部、第××代生徒会長という肩書きを持っていた黒岳カガリ先輩は、俺達が中等部に上がる一年前に何の問題もなく卒業していった。
しかし、彼女の所業は異例中の異例だった。
唯一、相棒学園中等部生徒会長という役職につきながら、学年ランキングの登録を辞退。その上、初等部との交流試合であるABCカップの参加も然り。尚且つ代表としての枠を副会長に押し付けた『愚か者』。
当時の清風会団長とその件で揉めたが、実力行使、つまりバディファイトでもってねじ伏せた『暴君』。
彼女は『愚か者』や『暴君』と揶揄されながらも結局誰の意見にも耳を傾けず、公での試合をしないという姿勢を変えなかった。
メグミは疑念を抱いたようだが、その点に関しては正直俺はどこか親近感のようなものを覚えた。

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