皆の先輩シリーズ | ナノ


▼ 海道大、カメ三兄弟(5/6)

「さて、アスタロト。そろそろ撤収しようか」

すく、と立ち上がったカガリは手早く釣り道具一式を、一方の私はレジャーシート等を片付ける。

「結局釣れたのはカメ三郎だけだったな。実質ボウズというやつだな」
「わっはっはっ、こんな日もあるさ。帰りにコンビニに寄ってアイスでも食べようか。それじゃあ、カメ三郎くん。縁があったらまた会おう」
「また会おうカメー!」

両手を振って別れの言葉を告げるカメ三郎と同じように手を振り、踵を返した。
まさにその時だった。

「待ってくれ! お前、いや、姉貴!」
「はい?」
「は?」

後ろから掛けられた声にカガリと私が振り向くと、埠頭にはカメ三郎だけではなく少年も立っていた。どうやらわざわざ漁船から降りたらしい。
だがカガリが姉貴とは一体どういうことだろう、と首を傾げているとそれに答える形で少年はまくし立てた。

「お前は姉貴と呼ぶにふさわしい存在じゃ! 是非とも姉貴と呼ばせてくれんか!?」
「え、えーと……」
「自己紹介が遅れた! わしは海道大! それでどうじゃろうか、姉貴!」

少年、海道大は一気に距離を詰め、カガリの両手を熱く掴む。
珍しくカガリが押され気味だが、いや、問題はそこではない。海道大が私のカガリの両手を掴んでいるという事実が問題だ。
しかし、私も大人だ。
とりあえず一発だけ殴ろうと構えたが、異変に気付いたカメ三郎がひしと私の足にしがみつき「落ち着くカメー!」と叫んだ。
離せ、カメ三郎!
海道大を殴れないだろう!

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