皆の先輩シリーズ | ナノ


▼ 海道大、カメ三兄弟(4/6)

「このわしが、海洋番長が負けたじゃと……」
「負けたね」
「しかもよりによってワンターンキルじゃと……」
「えーと……その、運がなかったね」

漁船の上でがっくりとうなだれる少年に、カガリが苦笑いを漏らした。
カガリは性質上、挑まれた形での勝負において負けることがない。
いつものカガリなら勝って当然という態度を取るのだが、相手になった少年のへこみ具合がものすごかった。まるでこの世の終わりのような顔をしている。
ファイト前に漁船の後ろから現れた彼のバディ、武神番長デュエルイェーガーすらオロオロしていた。正直面白い。

「くっ……約束は約束じゃ! 煮るなり焼くなり好きにせい!」
「いや、別に私は」
「そんなの駄目カメー!」
「番長が犠牲になるくらいなら俺達が身代わりになるカメー!」
「お、お前ら……!」

カガリの言いかけた言葉を無視し、泣きながら抱き合う少年と二匹の亀。
……なんだ、この茶番は。

「いや、あの子達は本心でやってるから茶番ではないね……」
「カガリ、これは端から見たら完全に茶番だぞ」
「良いじゃないか、若人と亀の友情劇。嫌いじゃない」
「若人って、きみも十分若い方だろう……」
「まあね」

カガリは肩をすくめたあと、改めて少年を見据え、明るく笑ってみせた。

「少年! 私は男泣きは嫌いではないが、男児たるもの簡単に泣いちゃ駄目だ!」

カガリの言葉を聞いた少年(と二匹の亀)は泣くのを止め、こちらを凝視する。その目には驚きと戸惑いの色があった。
カガリの隣にいたカメ三郎が「カガリ、カッコいいカメー!」と目を輝かせると、カガリはカメ三郎と視線を合わせるようにしゃがみ込み、「そんなことないだろう」と言って頭を撫でた。
……別にカメ三郎のことが羨ましいとは思っていないぞ。断じて。

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