皆の先輩シリーズ | ナノ


▼ 海道大、カメ三兄弟(3/6)

「この亀さらいめ!」
「亀さらいカメー!」
「亀さらいカメー!」

人さらいならぬ亀さらい。いや、誰が上手いこと言えと。
大きな漁船と共に現れた水色の髪の少年(と赤い亀と緑の亀)はカガリと私を指さし、声を荒げる。
彼の第一印象はまさに海の男だ。一見すると中学生のように見えるが……いや、人間の見た目による年齢などあてにならない。
ただカガリは十七歳にも関わらずあの大きさの胸を――

「アスタロト?」
「……」

私を見たカガリの口は笑っていたが、目が笑っていなかった。視線が『誰が胸の話をしろと言ったのかな?』と語っている。目で人を殺せそうだ。怖い。
一方の少年はカガリが私の方を振り向いた際、腰のベルトに備えていたコアデッキケースが見えたのだろう。
少年はさらにまくし立てた。

「お前がバディファイターならバディファイトじゃ! わしが勝ったらカメ三郎を返してもらう!」

ファイトの申し出に対してカガリは改めて少年の方を見遣り、肩をすくめた。
それを挑発行為と受け取ったのか、少年はわなわなと身体を震わせ始めた。後ろに控えている亀二匹が「お、落ち着くカメー!」と必死になだめている。

「別にファイトしなくても返しても良いのだけれどね。……ていうかきみの名前、カメ三郎なんだね」
「そういえば名乗ってなかったカメ! カメ三郎カメ!」
「私は黒岳カガリという。よろしく、カメ三郎くん」

改めて自己紹介し、握手を交わすカガリとカメ三郎。だが、今は名乗り合っている場合ではない。
現に亀二匹が「何をのんきに名乗り合ってるカメー!」と怒っている。
それに感化されてか、少年の目に闘志が宿る。

「先攻はそっちに譲っちゃろう! どっからでもかかってこい!」
「それはご丁寧にどうも」

やれやれ、と溜め息を吐いたカガリがルミナイズの構えに入る。私も一応人間の姿からバディモンスターとしての姿に戻るが、カガリと同じく溜め息を漏らさずにはいられなかった。
恐らく、今回私の出番はない。
なにせ少年の方からカガリに挑んだ以上、ファイトの勝敗は既に決しているのだから。


* * *

prev / next

[ back to top ]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -