皆の先輩シリーズ | ナノ


▼ 海道大、カメ三兄弟(2/6)

「亀だね」
「亀だな」

カガリの持つ釣竿の糸を巻き切った先、釣り針には青い亀がぶらりと引っかかっていた。不思議なことに制服、しかも学ランらしきものを着ている。

「リリースしよっか」
「そうだな」
「待つカメー!」

カガリと私の会話の直後、急に起き上がった青い亀は自ら釣り針を外し、跳躍。カガリと私の後ろに着地した。
何やら面倒な気配を感じながら二人同時に振り向くと青い亀は仁王立ちしていた。
どうやら最近の亀は二足歩行が出来るらしい。動物の進化もここまで来ると驚きである。

「リリースしちゃ駄目カメ!」
「駄目なんだ」
「というか、海藻を取っていたところに美味しそうなオキアミがあったら誰だって食いつくカメ!」
「いや、きみと魚くらいなものだと思うけれど」
「カメー……」

青い亀の口から虚しい声が漏れる。
どうやら語りでカガリに勝てる者はこの場に居ないらしい。
心の中で青い亀に合掌するとしよう。

「ところで本当にきみのことをリリースして良いかい? 私としては釣りを再開したいのだけれど」
「だ、駄目カメ! 今リリースされても一緒に海藻を取っていたカメいちやカメじや番長に会えないカメ! ここで待たせてほしいカメ!」
「いや、まあ、そういうことなら別に構わないけれど……」
「ありがとうカメ! 少しの間、隣に失礼するカメ!」

よいしょカメ、という声と共にカガリの隣にちょこんと座る青い亀。それに続きカガリと私も海と向かい合う形で座り込む。
この蒸し暑い中、私達以外に人の気配はないのがせめてもの救いだ。私、カガリ、青い亀という並びは端から見るとなかなかにシュールな絵面に違いないのだから。
さて、それから十分も経たない時に再び事件は起こった。

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