皆の先輩シリーズ | ナノ


▼ 炎魔バン(1/4)

急な眩暈に襲われ、俺は仰向けに倒れていた。青い空が、霞んで見える。身体に上手く力が入らず、指先も動かない。
遠くで舎弟達の声が聞こえた気がするが、それに答えることすらままならなかった。
ここで死ぬのだろうか。
いや、こんなところで野垂れ死をするわけには――

「お腹を空かせて行き倒れただけの男が、なに真面目に語っているのかな」
「いでっ!」

額に衝撃が走る。それから誰かの指で額を弾かれたと理解するまでさほど時間は掛からなかった。
反射的に閉じてしまった目を開けると、制服を着た見知らぬ嬢ちゃんがしゃがみこみ、こちらを見ていた。

「てめェ……人が真面目に語ってる時にデコピンする奴があるかよ!」

なんとか上半身を起こし、拳を握りしめる。しかし上手く力が入らず、まともに殴ることは叶わなかった。
それどころか、手の平で簡単に受け止められてしまう。

「倒れるまでお腹を空かせるきみが悪いんだろう? はい、これお茶とお弁当」

嬢ちゃんは俺の拳を下ろさせた後、もう片方の手に持っていたコンビニの袋を差し出す。どうやら茶と弁当が入っているらしい。
ずいと目の前に出された物と嬢ちゃんを交互に見たあと、俺は顔をしかめた。
なにせ知り合いでもなんでもない人間から渡された物だ。警戒しないわけにもいかないだろう。

「……毒とか、入ってねェよな」
「ここのコンビニで買ったものなのにどうやって毒を入れるんだい?」

それもそうだった。
今俺達が居るのはコンビニの前で、袋のロゴは明らかにそこのもの。
つまり嬢ちゃんの言葉は正論中の正論、ド正論だ。
ぐうの音も出ない。その代わりに出るのは腹の音くらいだ。

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