皆の先輩シリーズ | ナノ


▼ 祠堂孫六A(2/2)

「ふうん……なるほど。バディファイトの授業でその男の子にボコボコにされて祠堂くんは不機嫌なんだね」
「あの、カガリ先輩……繰り返し言わなくても良いですし……」
「あ、ごめん」

傷口に塩、とはまさにこのこと。しかもカガリ先輩に言われると、生徒会の役員なのだから弱いのは困ると言われているようでことさら辛い。
ただ、それは僕が勝手に思っていることだ。カガリ先輩本人は、そんなこと露ほど思っていないだろう。
けれど、周りの人間は違う。
生徒会に所属している生徒は、皆強くて当然だと思っている。同級生の「生徒会に入っているくせに」という言葉が嫌でも耳に残っていた。
思わず唇を噛むと、カガリ先輩は「ふむ」と呟き、真面目な表情を見せた。

「祠堂くん。相手は同じ中等部の一年生だ」
「? それは、まあ、そうですし」
「それならまず、挑発には乗らない」
「うっ」
「逆に挑発し返すくらいの落ち着きを持った方が良いかな」
「……挑発し返す、ですし?」

意外な言葉に、目を丸くせざるを得ない。
カガリ先輩は話を続けた。

「話を聞く限り、彼は相当な負けず嫌いのはずだ。十中八九、祠堂くんが挑発し返せば、それに乗っかってくると思う。ーーあとは祠堂くんが祠堂くんらしいバディファイトをすれば良い」

自分らしいバディファイト、と言われてふと気付いた。
確かに僕はあのファイトで自分らしいファイトをなにひとつしていない。
それは実力をほとんど発揮していないことに等しい。

「なんだかそう言われると勝てる気がしてきたですし!」
「うんうん、それは良かった。頑張って、祠堂くん」
「っ、ありがとうですし、カガリ先輩!」

僕が笑ってお礼を言うと、カガリ先輩はいつものように微笑み返してくれたのだった。

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