▼ 絢爛朱雀、大公爵アスタロト(3/3)
「遅れてしまってすまない。やつが張っていた結界のせいで探知すらままならなかった」
「わはは、なるほど。道理でまったく助けが来ないわけだ」
「やつは、今どこに?」
「ああ、絢爛くんなら龍炎寺くんとファイトをするために会場に行ったよ。ここにはもう帰ってこない」
「龍炎寺タスクと? それはどういう……?」
「絢爛朱雀、もとい六角嵐王ヴァリアブルコード。彼は未来のドラゴンワールド、スタードラゴンワールドの角王だ」
「か、角王が未成年を誘拐……!?」
「あ、いや、彼が目をつけたのは私自身ではなく私の能力だよ。……どうやらバディファイトクラブの実況をしている烏と鳩が私のことを喋ったらしくてねえ」
カガリがすっと目を細め、私はぎくりとした。
俗に言う口元は笑っているが目が笑っていないというやつだ。こういう時のカガリのはらわたは煮えくり返っている。
……それにしてもマルファスとハルファスがバディファイトクラブで働いていたとは。先日連絡を取ったキマリスが「最近のあいつら飲み会の付き合いが悪い!」と騒いでいたのはそういうことだったらしい。
「ま、あの二人の処遇については今度に持ち越すとしてだ。……アスタロト、床に膝をついてくれないかい?」
「? どうかしたのか?」
ソファに座ったままのカガリの言われるがまま、膝立ちの状態になる。
どうしたのだろうと首を傾げているとカガリの手が私の両頬を包む。顔がやけに近いと思った直後、唇に柔らかいものが触れた。
「心配をかけてごめん。あと、ただいま」
少し恥ずかしそうに頬を染め、カガリが微笑む。
一体なにをされたのか。時間をかけてなんとかそれを理解した途端、顔に熱が集まった。
「っ、そう、だな。そうだった」
こつり、と額を合わせた。
目の前にカガリがいるという事実に、思わず頬が緩む。
「おかえり、カガリ」
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